◎5匹目


とりあえず辺りを物色する。

部屋の鍵を確かめる。
かかっていない。下の階にいた母親であろう人物は先程出て行ったようだ。気配も無いから今この家には俺1人なのだろう。

窓の外を見る。
広くはないが綺麗に揃えられた庭が見える。周りは住宅が広がっている。何の変哲もない住宅街の中にあるようだ。

部屋を物色する。
出てくる出てくる漫画の数々。どれだけあるんだ…。あ、これ知ってるやつだ。サンデーもあるじゃないか。巻頭カラーは、

「……名探偵コナン。」

どういう事だ。表紙を飾るのは間違いなくあの少年。雑誌を開いてみるがカラーの部分は真っ白で、名探偵コナンのみが何も書かれていなかった。それ以外は全て読めた。

他の棚を漁る。
名探偵コナンと書かれた単行本が置いてある、が手を伸ばすと見えない何かに弾かれた。サンデーと同じようなものか…。あれはきっと俺には見れない。
棚の1つにカーテンがかかったものがあったので遠慮なく開けて中を見る。薄い冊子が詰め詰めに並べてられていた。一冊を手に取るとそこにはコナンくんと俺が仲良く抱き合っていた。なんだこれ。中を開くとなんだこれ。俺とコナンくん仲良すぎだろ。これもうイチャイチャしてるってレベルだろ。いやいや待て俺はショタコンじゃない。なのに全部読んでしまったじゃないか!な、内容が面白いだけだからな!!ひとまずこの棚は後に回そう。断じて後から読もうとか思ってないからな。

他の部屋も漁ったが怪しい物は出てこず、普通の一般家庭のようだ。通帳とかも隠してあれど置いてあるし個人情報も隠されていなかった。ヤツは苗字名前。歳は23歳。会社員。どこにでもいる普通の女。

まぁ最初の部屋で何となく理解はしてしまった。いや、理解は出来ないが起こってしまっているのは事実だ。

俺は名探偵コナンという江戸川コナン少年が活躍する漫画がある世界に来てしまっているということだ。

もう悩むのも面倒になってきたし一眠りしたらあの棚を漁ろう。



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