◎今度は俺が
今日は玻璃がおにぎりを作ってきた。どうやら自分で作ったらしい。
それを誇らしげに俺の前に出し、
「食べろ、薫!」
第三話
こ、これは……
「どうだ、美味いか?」
ニコニコと感想を聞いてくる。
言ってやりたい。
これ、塩と砂糖間違えてるぞ。
ベタすぎる……。
「初めて自分で作ったのだ!薫の為に作ったのだぞ、どうだ?」
そんな笑顔で言われたら言えないだろ……。
「やっぱり不味いか……?」
しゅんと項垂れた玻璃の頭を撫でてやる。
「美味いからそんな顔するな。」
そう言うとパッと華が咲くように笑顔が広がる。
「そうか!これからいっぱい練習してもっと美味いものを食べさせてやるからな!」
「……期待してるよ。」
次は味見をしてからくれることを願う。
「なぁ薫。」
おにぎりを食べてから雑談をしていたがふと玻璃が真面目な顔になった。
「何、いきなり。玻璃が真面目とか気持ち悪いんだけど。」
「お前は私を何だと思っておるのだっ!」
おもいっきり俺の背中を叩くが直ぐに真面目な顔に戻った。
「もし私がここに来た事が他のやつらにバレた時、私はきっとお前を傷付けるような事を言うだろう。だがそれは本当の気持ちでは無いことを分かっていてほしい。
そしていつか薫がここを出て行くとき、私も一緒に連れて行ってほしいということを忘れないでいてくれないか。」
そう言って俺の手をぎゅっと握る。これはこいつのお願いするときのくせなのだろうか。きっと昔の俺ならこの手を振り払うのだろう。でも今は放せないでいる。昔は千鶴さえいればそれでいいと思っていたのにな……。
「何年でも何十年でも何百年でも待っている。
だから……。」
「分かってる。だから大人しく猫被って待ってろ。」
今でも千鶴を探すという目的は変わっていない。
でも今はこいつも千鶴と同じくらい、いや違う意味で大切になっている。
それを玻璃が分かっているのかは分からないけど。
「必ず迎えに行く。」
俺はこの笑顔を手放したくないんだ。
今度は俺が、
お前の支えになる。
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