◎受付嬢と幽霊
「海かー海なぁー。」
コナンくんに誘われて返事をしたはいいが水着を持ってないことに気づいて早数日。これから海やプールに行く機会なんてそうそうないだろうし買うのもなぁ。Tシャツと短パンでいいかなぁでも重くなるしなぁ最近そんな高くないし買ってもいいかなぁでも重くなるしなぁ。なんて考えてたら少年探偵団の子たちに初めてあった公園の前を横切る。なんとなく眺めていると奥のベンチに人影が。珍しいな。ホームレスかな。でも腕がだらんと下に垂れてるしもしかしたら動けなくなってるのかもなんて思うとほっとけなくて。そーっと近づくと、
ぐぎゅるるるるるるるるるうぅぅぅぅううううう
なんて主張の激しいお腹だろうか。
「帰ろ。」
踵を返し出口に向かおうとした時、突然腕を取られた。犯人は言わずもがな。
「お、お嬢ちゃん、後生だから、後生だからハンバーグ弁当かチキン南蛮弁当を……!」
「図々しいな。」
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「はぁぁぁああ食った食った!!ありがとなお嬢ちゃん!」
「強制だったじゃないですか。」
あの後無理やりコンビニまで連れて行かれ勝手にカゴにハンバーグ弁当とチキン南蛮弁当とビールを入れられ引きずられながら再び公園に帰ってきて晩ご飯を食べた。もうヤケクソだから私も一緒に食べた。からあげおいしい。
「お兄さんこんなとこで何してたんですか?」
「いやー俺今その日暮らしみたいなもんだからさ。見栄張って大丈夫ですとか言っちゃったから頼るに頼れなくて。」
「そういう時は恥を捨てて頼るべきですよ。」
笑ってる場合じゃないんじゃないですか?
もしかしてこの人危ない人なんじゃ…。
「まぁ、人に言えない仕事してるかな。」
「読心術。」
「まんま顔に書いてあったよ。」
あの変人に関わりだしてから思ってることが顔に出やすいらしい。嫌悪感丸出しにしてたら引っ込まなくなった。昔はこんなんじゃなかったのに。
「じゃあ名前も教えてもらえないんですね。」
「名前はないぜ。俺、死んでるからね。」
変な人だなぁ。
「触れるじゃないですか。」
「………あんた結構大胆だなぁ。」
何さ。手握っただけじゃん。放そうとすると捕まった。そういや前にもこんなことあったな。
「ここで赤くなったら可愛いのに。」
「残念ながらそんな乙女じゃ無いんで。」
「さては慣れてるな?」
「そう見えます?」
「見えないな。」
即答しなくてもいいじゃん。
ふと時間が気になってスマホの電源をつける。うわ、もう23時じゃん。
「私帰りますね。お兄さんも早く帰った方がいいですよ。」
「だから帰る場所ないんだってば。」
にこりと笑われる。嫌な予感しかしないんですけど。
「泊めて?」
「嫌だ。」
「いいじゃんケチー!」
「女一人暮らしに男泊めるとかありえないですよね!しかも今日あったばっかの!名前も知らない男を!」
「ならあんたが名前つけてくれよ。」
「そーゆーことじゃない!」
「名前知ってればいいんだろ?」
「揚げ足取り!」
あの変人さんとはタイプの違う厄介さ!そういやあの人の名前知らないな…。
「なーお願いだって!後生だから!1日だけ!何もしないから!!」
「当たり前でしょう!」
うわこの人土下座しやがった。どんだけ必死なんだよ…。あーもー断るのも面倒になってきた。
「レイ。」
「は?」
「だから、名前。幽霊のレイさん。これでいい?」
お兄さんはキョトンとしてからお腹を抱えて笑いだした。そんなにセンス悪かったかな…。確かに安直すぎるけどさ、そんな笑うことないじゃん。
「そんな顔すんなって。うん、レイ、レイな。気に入った。ありがとな。これで泊めてくれるんだろ?」
「はいはい。1日だけですよ。絶対延長とかないですからね。朝には出てってくださいね!」
「約束は守るよ。そういやあんたの名前聞いてなかったな。」
「……名前です。」
「名前か、いい名前だな。これからよろしくな。」
「1日だけって言ったじゃないですか!ほら行きますよ!ここで騒いでたら迷惑です!」
厄介な人を連れ込んでしまったなぁなんて思ってたけど家に帰った途端レイさんは床に倒れて寝てしまった。そんなに疲れてたのか…。お客さん用の布団を引いてその上に引きずって寝かせる。
「なんだかとんでもないものを拾ってしまった…。」
次の日起きるときちんと畳まれた布団だけが床に置いてあった。レイさんの姿はどこにもない。あれは夢だったんじゃないか、本当に幽霊だったんじゃないかと思いかけたところで机の上にまたなと書いた手紙を見つけた。
(またの機会はこないでほしい)
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