◎「見つめるだけで胸が痛い」か、相手は頭が痛いだろうよ
「せんぱーい!」
「ゲッ出た!」
真波は相手が嫌がっているのをものともせず抱きつきに行った。
勇者である。
「退け!私はこれから仕事があるの!」
「えーそんなの他の人に任せちゃえばいいじゃないですかぁ。」
「5秒以内に離れないと不能にする。」
「ごめんなさい。」
「チッ惜しかった…。」
彼女は恐ろしい言葉を吐いて行ってしまった。
俺も背中に寒気が走ったぞ。
「真波、お前アイツのどこがいいだ。」
「全部ですよ全部。先輩山の如しですよ!」
「意味分からん。」
「はぁ…見つめるだけで胸が痛い…。オレ、生きてる…!」
恋は盲目と言うが、なぁ。
「見つめるだけで胸が痛い」か、相手は頭が痛いだろうよ
「東堂!アイツどうにかしなさいよ!後輩でしょう?!」
本人に言っても無駄であることを学び、直接の先輩である東堂に抗議する。
後輩の躾も先輩の仕事です!
「確かに真波は後輩だがオレにはどうすることもできんな。頑張れ。」
「使えねぇ!」
「この美形を使えないとはなんだ!!」
「じゃあどうにかしなさいよ!」
「天はオレに三物を与えたがあれは許容範囲外だ!」
「やっぱり使えないじゃん!!」
ため息が止まらない。どんどん幸せが逃げていく。
アイツ天使とか言われてるけど絶対羽根黒いから!小悪魔だから!
なんであんなに好かれたのかも分かんない上にほぼストーカーと化している元凶の「呼びましたか?」……………。
「なんで脳内会議に入ってくるの?」
「ほら、好きな人は夢に出てくるって言うじゃないですかー。」
なんかちょっと違う気がする。
ってあれ?あれ?なんでここにいるのかな?
正面には東堂が座ってたはずなんだけど、さてはアイツ逃げたな。
「ねぇ、今授業中なんだけど。」
「先輩は自習でしょ?」
「アンタは違うでしょ。
またほらあの女の子、委員長?に怒られるよ。帰りな。」
「えーやだぁ。先輩といるー。」
そんな顔したって可愛くないんだからな!
コイツ自分の顔分かった上でやってくるからムカつく。
みんながみんな騙されると思ったら大間違いだからな!
「あれ?先輩無視ですか?じゃあ遠慮なく。」
相手するのも疲れたから放置しているとこの後輩はじーっと私の顔を見る。
遠慮なくってそういう意味か!
とりあえず無視してやらなくてもいい課題をする。
「…………。」
「……………。」
「………………。」
「…………………。」
「…………………うっとうしいわ!」
「わぁい勝ったー。」
なんの戦いしてんだよ!
人の顔見て何ニコニコしてんの!何が楽しいの!
気になるじゃない!
駄目だ、コイツ梃子でも帰らないわ。
「…………分かった。
今日一緒に帰ったげるから今は教室帰りなさい。」
「ホントに!?」
「本当。だからこれ以上授業サボるのやめなさい。
インハイには真波の力が必要なの。テストで赤点取ったら出してもらえないんだから。」
「先輩、今名前呼んでくれた?」
え、無意識だけど。名前くらい普通呼ぶで…………そういや私今までコイツとかアンタとかしか言ってなかったかも。
「私はアンタに期待してるんだから、頑張りなさいよ真波。」
もう一度名前を呼ぶとパァッと花が咲いたように笑った。くそ、可愛いな…。
「オレ頑張る!先輩大好き!」
「?!?!」
ガバッと抱きついてきたかと思うとほっぺにちゅーされた。
アンタはアメリカ人か!?
動揺してる間に真波は教室を出て行った。
いったいあの子はどこまで本気なのか…。
「去り際にちゅーとは、やるな真波。」
とりあえずどこに向ければいいか分からない感情を音もなく帰ってきた東堂にぶつけといた。
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