◎第伍話


またしても新選組幹部に囲まれて広間に正座させられてる私。

「何故女だって最初に言わなかったんだ。」

土方さんに睨まれたから睨み返す。

「一回目は嘗められるのは嫌だと思ったので。
二回目は女だと分かったら入隊させてもらえないと思ったからです。」

暫く睨み合った後、土方さんは顔をしかめて頭を掻いた。

「……………だぁもう!
見抜けなかった俺達にも非はある!
実力を認めて入隊させちまったんだ。今更追い出さねぇよ!」


第伍話


「お前は千鶴と相部屋だ。こいつも女だから安心しろ。」
「知ってました。」
「えっ!?」

驚くことなのかな?
身体つきが全然違うし、こんな可愛らしい子が男の訳がない。
見ると千鶴さんは肩を落として落ち込んでいた。


「こいつは隊士ではないが、訳あって新選組で預かっている。
何かあれば聞け。」
「よろしくお願いします。」

戦えないのに必要とされてるって事は何か特別な事が出来るんだろうか。
私はぺこりと頭を下げた。

「今日は隊についていろいろ教えてもらえ。
おい、左之。お前今日非番だろ?
拾って来たのはお前なんだからな、こいつにいろいろ教えてやれ。」
「はいはい、了解した。行くぞ名前。」
「はい。」
「しかしお前が女だったとはなぁ。
俺も平助の事言えねぇな。」

粗方隊についての説明してもらってから私は原田さんの部屋でお茶を出してもらっていた。
勿論淹れてくれたのは千鶴さん。

「なんで男装なんかしてたんだ?」
「私は女の格好なんて殆どした事がありません。
小さな頃から常にこの格好です。」
「なんか理由でもあるのか?」
「…………………生きる為。」

原田さんは眉の間にしわを寄せた。
もっとちゃんとした理由を話さなければならないのだろうか。
でもそれを言ってしまうときっと私はここにいられなくなる。

「ま、いいや。
言いたくねぇならそれ以上聞かねぇよ。
新選組は身分を問わず戦える奴なら大歓迎だからな。」

そう笑って私の頭を撫でた。
そして私の顔を覗きこむ。

「しっかしお前、男のわりに綺麗な顔してると思ってたけど、女だと分かっても美人だな。」
「そんな事ありません。千鶴さんの方が美人です。」
「確かに千鶴も美人だけど、お前とは別だな。
千鶴は可愛らしいが名前は綺麗が似合う。」

人に誉められるなんて兄様以外に初めてだ。
お世辞と分かっていても、案外嬉しいもんなんだな…。

「あ、ありがとうございます…。」

俯きがちに言うと原田さんさっき撫でた時よりも乱暴に頭に手を置いた。
怒らせてしまった。
殴られる…、

「すいませ、」
「お前、笑えるじゃねぇか。」

ぎゅっと瞑った目を開けると原田さんは優しい顔で笑っていた。
それからわしゃわしゃとまた私の頭を撫でた。

「お、怒らないんですか…?」
「なんで怒るんだよ?」
「感情を表に出したから…。」

小さく呟くと、原田さんは溜め息を吐いた。

「お前がどんな育てられ方したかは知らねぇけどよ。
別にお前が笑ったからってここでは誰も怒らねぇよ。
せっかく綺麗な顔してんだから、笑ってろよ。」

兄様の前以外で笑ったことなんてなかった。
感情を出せば殴られ蹴られた。
それから私は感情を押し殺して生きてきたつもりだった。

「……………ありがとう、ございます。」
「あぁ、それでいいんだよ。」

ここに来る事が出来てよかったです。
私は今出来る精一杯の笑顔で返した。



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