◎第捌話


今日は快晴。
こんな日には中庭での鍛練に限る。
さぁ、今日も頑張ろう。

「名前!」

木刀を道場から拝借して素振りをしていると藤堂さんがこちらへ走って来た。

「おはようございます、藤堂さん。」
「平助でいいよ。
それに敬語とかそんな堅苦しくしなくてもさ、俺達仲間なんだからもっと仲良くやろうぜ!」

あぁ、本当にここの人達はいい人だ。
ついこの間まで赤の他人だった私をもう仲間だと呼んでくれる。

「じゃあ、平助。
どうしたの?私に何か用?」
「いや、名前が鍛練してんのが見えたからちょっと手合わせしたいなぁと思ってさ!
やろうぜ。」

そう言って平助は木刀を構える。
強い人と練習が出来るなんてこの上無く嬉しい。
私も木刀を構えた。

「行くぜ!!」

掛け声と同時にお互い地を蹴り鍔競り合う。
力では勝てない事は百も承知。
一旦距離を取るために後ろへ飛んだ。

「どうした名前!これで終わりか?」

やっぱり強いな。

「…………まだまだ!」


「あーあ。なんとか勝てたって感じだなぁ。
名前やっぱ強いな!」
「そんなことない。私はまだまだ弱い。」
「そんなことねぇよ。
確かに女だから体が軽いのは仕方ないけどさ、それを補えるぐらいの身体能力があるんだからさ。
大概の奴等には勝てるだろ?
すげぇよ、お前。」

平助がニカッと笑う。

「…………ありがとう。」
「あ、照れてる!」
「照れてない!」
「いーや、照れてるな。」
「照れてないって言ってるだろ!」

お互いに睨み合ってから笑った。

「お前やっぱ笑ってた方が可愛いよ。」
「なっ!?可愛くない!!」

ニヤニヤ笑いながら言う平助に食ってかかろうとすると後ろから抱き締められた。

「平助、何昼間から口説いてんだよ。」
「口説いてねーよ。
左之さんこそなんで名前に抱きついてんだよ。」

振り返ると原田さんの顔があった。

「こんにちは、原田さん。」
「おう、頑張ってるな名前。」
「名前もなんでそんな普通なんだよ…。」

え、何かあるの?
首を傾げると平助と原田さんは溜め息を吐いた。
なんなんだ二人して。
そこに千鶴も来て更に溜め息。

「原田さん、名前ちゃんに何してるんですか。」
「ん、抱きついてる。」

そう言って原田さんは私の頭の上に顎を置く。
すると千鶴がぐいぐいと手を引っ張った。

「離れてください。名前ちゃんは今から私とお茶するんです!」

え、そうなの?

「あ、俺も飲みたい!」
「ということなので名前ちゃん返してください!」
「と、いうことらしいので離してもらえますか?」

顎が置いてあるので注意して少しだけ上を見ると思いっきり顔を逸らされた。
そのお陰で?手が緩み私は原田さんから距離を取った。

「さ、行こう名前ちゃん。
近藤さんが美味しいお団子をくださったの。」
「う、うん。あの、私原田さんに何かした?」
「何もしてないぜ。
さ、左之さんなんかほっといて行こうぜ!」

え、でも原田さん固まってるんだけど。
大丈夫かな…。
そんな原田さんを尻目に私は平助と千鶴に連れられて行くのだった。
近藤さんに貰ったというお団子は美味しかったです。


「あの上目遣いは反則だろ…。」



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