快晴!快晴!
歌でも歌いたいくらいにいい気分だ
天気のせいだけじゃないってことには
とっくに気づいてるけど

ヴォロとワタシは
明日会うことになっている

彼氏にあの子を紹介するとき
父親の名前は嫌がるだろうからと
じいさんの名前を少々拝借して
勝手にヴォロなんて呼んでみた

さてどんな顔を見せてくれるのかと思ったら
お得意のポーカーフェイス
つまらないったら無かったが
彼に気を許してもらうという
第一目的は達成したんだろう
明日に繋がったからね


まあ、なんにしても
絶好のマーケット日和には間違いない



いきなり下品な話で申し訳ないんだが、
ワタシはお金が好きだ
愛してると言ってもいい
(この言葉は結構重い。
何しろ、自分の男たちにすら
滅多に言わない、
プレミア付きの言葉だから)

男の機嫌をうかがわずになんにでも
(例えばどんなにくだらないことにでも!)
好きなものを好きなだけ買えるのは
すこぶる気分がいいし、
お金をもうけるその作業も割りと好き
だからこうやって、
土日もマーケットなんかで小遣いを稼ぐ

え?それじゃ大した額にはならないだろうって?
いや、それはよっぽど
いい子ちゃんな品物を売った時でしょ 
1000年生きてるだけあって
ちょっとした悪知恵はいろいろ身につけてきた

その一つがこの白い粉
数百グラムで莫大な金に化けてくれる
ダンブルドアなんかに見つかったら、
とんでもない事になるだろうけど、
そこはwhoちゃんのなせる技
それとなく貸しを作って
疑うだけでも罪悪感を感じるように仕向けてきた
ちょろいね、ホント

今の彼氏のアニル君には
インドからのこれの輸入に
一役買ってもらっちゃってる
まぁ、彼が知りえないところでやってるわけだし、
ずいぶん恩義も感じてくれてるから
バレる前に大人しく帰って幸せになって欲しい

正直言って
そろそろ恋が腐りかけてんのも感じるしね
異国でのアヴァンチュールに
本気になってどうするよ
君、結局良いお家の坊っちゃんじゃん?
このご時世に絵の修行なんて
道楽にしかなんないことさせてもらってさ
毒にも薬にもならんような美人な奥さんもらって
幸せな家庭ってやつを築けば?
ワタシなんかと一緒にいれば
ろくなことになんないのは目に見えてるし

とまあ、目の前にいない彼に向かって
舌の上で言葉を転がす
年の割に落ち着いた子で
そこそこ気も利く
それでもそこに気付けない、
初なところが好きで
喰っちゃったわけなんだけど

なんだかんだと言いながら、
ワタシはやっぱり
アニルが気に入ってるってコトだと思う
あの人とかヴォロとは別の意味で

別れるのに苦労しそうだと思い始めたのは
いつだっけ?

あともう少しって陳腐な言い訳しながら、
いつもなら別れを切り出すタイミングを
わざと見過ごすようになったのは。

面と向かってさっき考えてたようなこと言わずに
とっておこうとする自分に気づいたのは。

こういうコトは早く済ませたほうが
お互い傷が浅いことぐらい
とっくに学んだはずなのに

シーツの隙間で
冷え切った足先を
彼がさり気なく長い脚ではさんで温めてくれる
瞬間とか、
滑稽なほど集中して絵を描いてたのに
ワタシが名前を呼べば
嬉しそうに振り返るところとか
たまんなくなるぐらい、かわいいと思う

あの刹那をむさぼりたくなったら
恋は終わらせなきゃいけない

風花が舞っているのに気づいて
顔を上げれば
あれほど晴れていた空が曇り始めている
指先を白い息で暖めつつ思う

春になったら、別れよう

巣立ちの季節、きっとあの子もやっていけるはずだ



Excuse my French
(暴言失礼!)




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