水滴で白く曇った窓ガラス
キュッキュと音を立て指先でこする
目を凝らすと
森の入り口でプラチナブロンドが
姿くらましする寸前だった

爺さんの代から髪色変わってないんだ
すげぇなプラチナDNA
あ、でも毛根の量も遺伝してんのかな
さらっさらなだけにデコ後退してたもんな
アブラクサスくん
若いのに気の毒なやっちゃな


「…聞いてるの」


後ろから絶対零度のお声がかかった
何かをお話中だった
泣く子も黙るヴォルデモート卿に
マルフォイ家の毛髪事情に思いを馳せてましたとはいえまい
なんたって、ここには二人しかいない
彼のご機嫌を斜めにしたとして
直すのはワタシだ
にっこり笑顔で振り向く

「いんや?アブラクサスくんに会わせてくれて感謝感激してたところだったんで」

少なくとも真っ赤なウソじゃない
サーモンピンクの色をしたウソとホントの境界線
これぐらいが実は一番つかえる

「とにかく、君のプライベートなんて1ミリの興味もないけど、住所ぐらいは知っておかなきゃ面倒だ」

「住所ね、はいはい。このペンと髪使って大丈夫?」

「髪、(笑)」

「地味にツボるな、恥ずいわ!髪について考えすぎだろ」

「いや、お前がな」

「とか言ってる間に書けたよ、すごくね、このwhoちゃんのながらスキル」

「よっぽど自慢できることがないんだろうね、気の毒に」

「マジな目で言うな、泣くぞ」

「ぜひ、見せてもらうよ」

「何さ、一人称俺様ヤロウ、部下の前で口調変わりすぎだろ。トリハダもんだわ。二重人格かよ」
黙り込んだのを見てとると、すかさず顔を覗き込む

「ん?どうしたのかな?
まさかのブロークンハートしちゃった感じ?
ついでだから、もっと言ってあげると我が君とか呼ばせてんのも厨二丸出しすぎてウケる。
甜められないように頑張ってんのはわかるんだけどさ。キミが今、力を入れるべきはそこじゃないっしょ。もうちょい中身ができたら、自然とキミに対する周りの態度は変わる。道程は長いんだから今みたいな服従のさせ方だと保たないよ。
ホグワーツ首席の頭をもっと有意義に使えば?
ドゥーユーアンダスタン?っうわ!」
突然頬に添えられた手に驚くと、次の瞬間思いっきり抓り上げられた

「ギブギブギブ!ひゃなせこんにゃろ!」

「…ふん」

「ぐぇー、絶対ほっぺたの皮伸びたよ!誰かさんが
モチのように引っ張ったお陰で!」

「年寄りは話が長い。さっさとその住所の紙を渡せ」

「なんちゅうことでしょう、神よ、このボケナス青年を救いたまえ。アーメン、ソーメン、ヒヤソーメン」

「…ネタが古すぎる。
25-27 ledbuly road ,London W11 3AB、家は蚤の市がある辺りかい?」

「そうそう、ポートべローマーケットってやつですよ。ワタシも週末は店を出してるんで、よかったら来て下さい」

「それで生計を立ててるのかい?」

「いや、そっちは趣味みたいなもんかな。本業はウエストボーングローブにある、つまりその住所の本店とダイアゴン横丁の支店のやりくり」

「ちょっと待て、君の職業は?」

「うーん、なんだろう。簡単に言うとデザイナーかなぁ。自分のブランドで衣服やアクセサリーのデザインしたり、絵を描いたり人形なんかを作ったりして売ってる。あ、でも蚤の市で主に売ってるのはアンティークだけど。」

「経営は自分で?」

「あんまり詳しくないから、人を雇うことが多いかな。数字は苦手なんだ」

「だろうね」

「さらっと失礼!で、そろそろ帰っていい?質問があれば呼びに来てくれたら答えるし、一昨日からずっと起きてりゃさすがに眠いわ。キミも荷ほどきしなきゃならんでしょう」

「部屋はたくさんある。泊まっていけばいい」

「いや、結構」

「…なぜだ?」
かすかに怒気をはらんだ目がこちらを見据える
自分の申し出を断られただけで
プライドを傷つけられたと腹を立てるキミは
やっぱり、子供だ
闇の帝王には50年早い



「…ワタシ、自分の枕じゃなきゃ眠れないんで」


Don't ask for my opinion and get mad
when I tell the truth.
(ワタシの意見を聞くなら、ホントのこと言っても怒らないで)







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