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実際、事業部の奴らとも上手くコミュニケーションを取れているみたいだし、他事業部や社外からの電話対応も様になってる。そこから彼女が1年どれだけ頑張ってきたのかが窺えた。
「(ま、正直に言うと教えることが今の所ないってのが少し可愛くないかな)」
世間一般ではそんな部下を重宝したり利用したりする上司がいるのかもしれないけど、残念ながら俺はそこには当てはまらない。部下を守ったり、部下の長所を伸ばしたり、ミスがあったら指摘して繰り返さないようにしたり、皆やクライアントが気持ち良く仕事出来るようにするのが上司として当たり前のことだし、上に立つものとして誰よりも自分の事業のことを理解していなくてはならないと思っている。
…それはまぁ、職場での俺だけど。付き合いの長い各室長たちなんかは普段の俺を知ってるからある意味楽で、ある意味質が悪い。例えるなら昨日のカノエの一言だ。手癖が悪いってなにさ。あれじゃまるで手あたり次第寄ってくる女の子に手を出してるみたいじゃない。全く。
「ヒノト室長、至急この書類の確認をお願い致します」
「うん、分かった。ありがとう」
けれど昨日の一件があったからか室長室に入ってくる時はさっきからドアは開けっ放しだ。相当警戒されちゃったかな。まぁ、あれは俺が悪かったから言及しないけど。
「コトカちゃん、お昼休憩の後すぐに反物工場の視察に行くからその近くで一緒にお昼食べよう」
「え?」
「ここからだと微妙に遠いんだよね、あそこ。それに昨日のお詫びとしてご飯だけど奢らせてもらえないかな?」
何も嘘は言っていない。
視察に行くのは彼女にとって貴重な体験のはずだし、それになによりこのまま警戒されたまま一緒に仕事をするのってお互い疲れちゃいそうだし。「自業自得だろ」とカノエの声がした気がしたけどそんなの無視。いちいち出てこないでよね、カノエ。
「…分かりました。ではお言葉に甘えさせていただきます」
少しの間の後、彼女は若干渋々といった感じではあったが了承してくれた。
「ありがとう。じゃあ、この書類を確認して提出先に届けたら向かおうか」
時計を見ると11時頃。そろそろ移動しないと店も道も混み始める頃合い。移動時間と食事時間を逆算してもそれが妥当だ。
彼女は俺が時間を確認したことを察して「はい」と一言言った後、一礼をして室長室から退室した。
「(第一関門を突破、って感じがするな…さて、早く書類を確認して移動しないと)」
静かに閉まるドアの音がやけに耳に残ったのは気になったけど、目の前の書類に集中した。
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