降り止まぬ雨に全てを流して

Reborn



''マサル''その名前を山岸の口にした時、蓮の肩が微かにピクリと揺れた。
「ちょっと待って、整理したい」
マサル、マサル……と何度も名前を繰り返し復習する。
そして、はっととある人物を頭の中で思い出す。
そうだ!! イトコのマサル君!!
「……ん? ちょ……ちょっと待って? マサル君がいると何がいーの? 状況が全然掴めないだけど」
首を傾げて聞くオレに、蓮以外の皆が冷めた眼差しで見詰める。
「な、なんだよ。そんな目で見んなよ」
そう言ったオレに、蓮を覗く周りの皆が静かに溜息を吐く。
「喧嘩売りにいくんだよ!!渋谷三中の2年対オレら溝中2年で''戦争''だぁ!!」
拳を握り締め意気込むマコト。
そう言えば、マサル君、渋谷三中で番張ってるって言ってたような。
「って事は、え!? 今からその中学乗り込んで喧嘩すんの!?」
''渋谷三中'' ''喧嘩'' その単語が二人の口から出て来る度、蓮の肩がピクリと揺れる。
そんな蓮の様子など気付かず、今迄黙っていた筈のタクヤが静かに口を開く。
「タケミチ、溝中ウチはナメられてんだぞ? やるしかねーだろ?」
「ナメられてる……」
そんな理由で? そんな小さな理由で喧嘩するの?
「そんなビビってるフリとかいらねーし! いつもみたい、出会い頭裏拳かましちゃうんだろ!?」
「ウラケン?」
「タケミチ、''イケイケ''だかんなー」
喧嘩の話で盛り上がる四人組をオレと蓮は、蚊帳の外でぼんやりと騒ぐ四人の姿を見ていた。
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待て! 待て!! 待て!!! 早い、早い!! 展開が早い!
何やら興奮気味で騒いで居た四人組とハンバーガーショップを後にして、今から喧嘩するのに危ないからと蓮と別れて、其れから。
段々と思い出されていく記憶の数々。
確かにこんな事あった! 渋谷の中学に乗り込むために、番はってるイトコの''マサル''君に話通しにいったっけ……。
喧嘩……喧嘩……か。10年以上してねーぞ?! やべぇ……漏らしそー!
怒鳴られちゃうんだよ? 殴られるんだよ? 血出るよ? 怖いよ、やだよ。当たり所、悪かったら死んじゃうんだよ?
「ボ……ボクら、1年なんで2年生の事は……」
「んっだよ1年坊か!チンコに毛ぇ生えてんのか?」
渋谷三中の1年に絡んでいるあっくん達の姿に、オレはこれから始まるかもしれない喧嘩を考えて冷や汗を掻く。
オレの周りって、こんなイケイケだったけ!?
バクバクと嫌な程鳴り響く心臓の音。落ち着くんだ、オレ。これは、只の走馬灯だ。走馬灯なんだ! オレは、これから始まる出来事に1人、嘆き焦って居た。