入寮

入寮


此れには、長年の付き合いである絵心も唖然していた。

「青い監獄にサッカーと関係ないことなんて一つもない。ましてや、絵心が考えた物に無意味なんて存在しない。周りを良く見なよ吉良涼介」
「え?」
「絵心が創った、その部屋の広さは16.5×40.32m。P・Aペナルティーエリアと同じサイズだよ」

声を出して話している内に、どんどんと顔色を悪くしていく蓮を見て、絵心はこれ以上、蓮が話す事は危険だと、長年の過保護さで察知し、そっと優しく蓮の口を塞いだ。

「蓮の言う通り、その部屋は、P・Aペナルティーエリアと同じサイズだ。全てのゴールのルの約75%は、この中から生まれる。ストライカーの仕事場だ。つまり、ここでの身体捌きポジショニングがストライカーの価値を全てを決める……。そんな、戦場で生き残れない人間にストライカーの才能はない」
「だっ……だから、どーした!? 部屋の広さはわーったよ! だからWオニごっこWは、サッカーじゃねぇっつってんの!!」

絵心が此処まで言っているのにも関わらず、吉良は、オニごっこの本当の意味も理解せず、モニターへ映る絵心を責め立てる。
「……逃げる側に要求されるのは、対人感覚・駆け引き……ポジショニング」

冷静さを失い感情で怒鳴りこむ吉良とは違い、感情へ刈られる事無く何処までも冷静な絵心。そして、此のプロジェクトの最初の課題であるオニごっこが如何に大切かを伝える。けれど、吉良涼介は、たかが二分ちょいで自分の何が理解できると伝える。此れには、流石の蓮も呆れていた。其れは。絵心も一緒の事だったのか、絵心は、何処までも広がるぱっかりと穴が開い様な漆黒の瞳を鋭くさせて吉良を見詰める。

「1試合の中で一人のプレイヤーがボールを保持できる平均時間は136秒。お前は平等に与えられた1試合分の機会をフイにしたんだ」
「で、でも……ラスト10秒じゃ何も……」
「お前は試合でも同じことを言うのか?」

思い返せば、タイマーは、また一秒残っていた。彼は、10秒じゃどうにもならないと言ったが、残りほんの一秒でも足を伸ばせば、素早く動けなかったであろう五十嵐君へ当たれば、彼は生き残れた。だが、それを見逃し、短い時間で生き残る事を諦めた彼は、紛れもな敗者だ。

「このWオニごっこWにおけるの"オニWは、ボールを持ち続けることでW敗者Wにもなり得るが、誰かに充てる事で、自らがW勝者にもなる事が出来る有権者だ。ストライカーとは、その全責任を負い、最後の一秒まで戦う、人間の事ですよ。倒れたイガグリじゃなく、自分よりランキングが上の奴を倒そうとしたW潔世一W。其処から、ボールを奪い一番強い者を倒そうとしたW蜂楽廻W。其れこそが、集団の常識に左右されない。己の為だけの執念であり……俺が求める……ストライカーのエゴイズムだ」

残り一秒でも残っているのにも関わらず、時間制限が少ないからと言い訳で逃げた吉良涼介は敗者だと告げる絵心。慈悲もなく冷淡な声音で「帰れ」と告げる。

「……だって、アイツが……急に蜂楽が……来たから……」
「吉良……君?」

名前を呼ばれた吉良は、凄い形相で潔を睨みつけて一言も離す事なく部屋を出っていった。そして、吉良が部屋を出っていったのと同時で、絵心の腕の中にいた蓮は、意識を失ったかの様に眠りについた。

→かいぶつ






降り止まぬ雨に全てを流して
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