降り止まぬ雨に全てを流して



07






*宿儺様が誰状態。

恵と悠仁を追って、屋上に辿り着いた私の視界に入り込んだのは、悠仁の身体に受肉した宿儺の姿だった。
「ケヒッ。ヒヒッ」
受肉した宿儺はゲラゲラと笑顔を歪めて笑い、着ていたパーカーを粉々に引き裂く。
「ああ、やはり!! 光は生で感じるな限るな!!」
最悪だ……! 最悪の万が一が出た……!特級呪物が受肉しやがった。復活してしまった宿儺の姿に、恵は焦りを見せる。
「呪霊の肉ではつまらん! 人は女は何処だ!!」
しかし、その一方で、私は宿儺の受肉を目の当たりにしながらも余り驚いた様子を見せなかった。

宿儺seid

一瞬で倒してしまった呪霊をゴミを捨てるかの様に投げ捨て、辺り周辺を見渡す俺の、視覚に入り込む一人の女の姿。
女の顔には、何処か見覚えがあった。
あの玉房結びの耳飾りに、青みを帯びた紫色の珍しい色合いをした瞳。
ふわりと鼻腔をくすぐる懐かしくも奥ゆかしさのある優しい匂いと酷く心地の良く感じる雰囲気。
その一方で他者に有無を言わせない程、ひしひしと肌に突き刺さる程の''絶大な''何か。
「何やら懐かしい感じがすると思えば、俺の友である蓮では無いか」
久方ぶりに会えた''懐かしい友''を、俺は久方ぶりに嬉しさを感じ、目の前の蓮を抱きしめた。
「久しぶりだな。会いたかったぞ」
蓮の美しい烏の濡羽色の黒髪を指に絡ませてもて弄び、ふっくらとした肉付きの良い蓮の頬に擦り寄る。
「何時の世で会っても、お前は愛いものだな」
小柄な蓮の身体を抱き上げて、俺は目の前の女に全身で甘える。
そんな、俺の姿を見たもう一人の小僧の顔が唖然の色に染まる。愉快な事だ。

恵seid

蓮さんを抱えて、全自然霊で#name2#さんに甘える呪いの王の姿を間近で見て、俺は驚きの余り固まっしまった。
本当にあれが、呪いの王と呼ばれ、人々が恐れた両面宿儺なのか?
何だ、あの雰囲気の変わり様は。
先程まで感じていた筈の殺気や威圧感が今は微塵も感じられない。
そもそも何故、あの呪いの王は蓮さんの事を知っているんだ?
あの二人は知り合いか何かなのか……?
目の前で繰り広げられている光景に、俺は二人の関係性について疑問を浮かべるが、突如感じたビリビリとした多大な威圧感と殺気に、頬から冷や汗が垂れた。
「……! いい時代になったのだな。女も子供も蛆のように湧いている。素晴らしい、鏖殺だ」
随分と変わり果ててしまった街の風景を見詰め、蓮さんを抱えたまま、又もや不適に呪いの王が笑った。
街の風景を見詰め、くっくっと喉を鳴らし笑う宿儺の首を、もう片方の手がグッと押さえ込んだ。
「あ?」
「人の体で何してんだよ」
「!!」
「オマエ、なんで動ける?」
「? いや、俺の体だし」
「動くな」
どこか様子が可笑しい。まさか、元の虎杖本人自身に戻ったのか?そう思いながら、俺は目の前の呪いの王へ向けて静かに口を開く。
「今すぐ、蓮さんを離せ。それと、オマエはもう人間じゃない」
「は?」
「呪術規定に基づき、虎杖悠仁。オマエを____呪いとして祓う
ころす

虎杖に向けて、静かに祓う
ころす
事を告げた俺に、虎杖の瞳が大きく見開いた。


 戻る