伏黒seid
五条先生から蓮さんを託され、後もう一つ、五条先生が持っていた紙袋を渡された。
「これは?」
「喜久福」
この人、土産買ってから来やがった。人が死にかけてる時に。と小さな衝撃を受ける。本当、ロクでも無い人だ。そんな、俺の心情を読んだのかいつものニヤけた表情を浮かべる五条先生。
「土産じゃない。僕と蓮で帰りの新幹線で食べるんだ」
「後ろ!!」
呑気に話す五条先生の背後を虎杖(宿儺)が襲いかかってくる。
が、何一つ五条先生には虎杖(宿儺)の攻撃は当たっていなかった。
「生徒の前なんでね。カッコつけさせてもらうよ」
「!!」
攻撃を避け、虎杖(宿儺)の顔面に五条先生の重たい一撃が一発入る。流石の虎杖(宿儺)も五条先生の速さには驚いているようだ。
「まったくいつの時代でも厄介なものだな。呪術師は」
意図も簡単に攻撃を交わす五条先生へ虎杖(宿儺)は、不敵な笑みを浮かべながら、もう一度一振り拳放つ。
「だから、どうという話しでもないが」
虎杖(宿儺)の攻撃で、沢山の砂埃の煙幕が舞う中、無傷で現れた五条先生を、虎杖(宿儺)は驚きのあまり目を見開く。
「7、8、9……そろそろかな」
また、虎杖の身体に刻まれた紋様が消えて行く。
そして、宿儺特有の四つある目の内の二つの瞼が、ゆっくりと静かに閉じられて行く。
「おっ。大丈夫だった?」
「驚いた。本当に制御できてるよ」
「でも、ちょっとうるせーんだよな。蓮に合わせろってさ」
「それで、済んでるのが奇跡だよ」
あの宿儺を押さえ込んだのか。唖然な表情で蓮さんを抱えながら、二人の様子を見詰める。
すると、突然五条先生の指が虎杖の額にトンと触れたその瞬間。
虎杖は力を失ったかの様に、五条先生の方へ倒れ込んだ。
「何したんですか」
「気絶。これで目が覚めた時、宿儺に身体を奪われてなかったら、彼には器の可能性がある。さて、ここでクエスチョン。彼をどうするべきかな」
「……仮に器だとしても、呪術規定にのっとれば虎杖は死刑対象です。でも死なせたくありません」
俺は、自分の腕の中で眠っている蓮さんを強く抱き締める。
「……私情?」
「私情です。なんとかしてください」
強い意志を宿したの眼差しで五条先生を見詰める。
そんなの俺の眼差しを見た五条先生は、俺の腕で眠っている蓮さんへと視線を向けた。
「其れで、蓮の意見は?もうとっくの昔に起きているでしょ」
優しく尋ねる五条先生に、俺の腕の中で眠って居た筈の…蓮さんの瞳がゆっくりと開かれる。
「私も……恵と同じく悠仁を死なせたく無い」
「蓮さん、言葉を……」
何時もの筆記でのコミュニケーションを取る訳でも無く、初めてちゃんとした意見を口にする蓮の姿に、俺は勿論の事、五条先生も酷く驚いていた。
「蓮も恵同様……私情?」
「私情」
何時ものおっとりとした感じはなく、強い意志が篭った眼差しで五条先生へとハッキリとした口調で蓮さんは、そう言って退けた。
そんな、蓮さんを五条先生は。
「クックック。可愛い生徒の頼みと、可愛い僕の蓮の頼みだ。任せなさい」
ビシッと親指を立てて笑って言いのけた。
五条先生の言葉で安心できたのか、蓮さんは薄らと微笑みを浮かべると、また静かに眠りについてしまった。