降り止まぬ雨に全てを流して



02






消えてしまった特級呪物を探すべく、今日も杉沢第三高校やその周辺の近所を探索していた恵を他所に、私は一人恵に黙って、杉沢病院を訪れていた。
301号室____虎杖倭助とフルネームで書かれた病室の前で私は一人佇む。
此処に居たんだ。良かった。倭助は、まだ生きてる。
名前が書かれたプレートを撫でながら、倭助が生きている事に私は何処か安心感を覚えた。   
古き友が生きている事を心中喜ぶ私を他所に、一人の青年が私に声を掛けて来た。
「あの……」
声が聞こえる方へ、そっと振り向けば其処には花束を持つ1人の青年が佇んでいた。
「爺ちゃんになんか用事?」
不思議気な表情で此方をじっと見詰める青年に、此れから青年に振り掛かる未来や彼の魂の本質を見てしまった私は、虎杖悠仁からそっと顔を逸らす。
そして、私は自分の私物である菫色の花の絵があしらわれた可愛いメモ用紙へ書かれた''重たい''言葉を虎杖悠仁へ見せた。
「虎杖悠二。倭助との時間を大切に」
「え?」
メモ用紙に書かれた言葉と虎杖悠仁本人自身の名前が記されていた事に、悠仁は驚きに目を丸くした。
「何で俺の___。」
''名前を知ってるの?''その言葉を紡げようと口を開き掛けた悠仁の言葉を遮るかの様に、私は悠仁の唇をそっと人差し指で塞いだ。
私の瞳と悠仁の美しい琥珀色の瞳が混ざり合い、静かに溶け込む。
私は、自分を何処かぼんやりとしたまま見詰める、悠仁の耳元へそっと唇を寄せる。
「貴方の事は、ずっと前から知っている」
「また、会おうね」
甘く透き通る声で悠仁の耳元で呟いた後、未だ気抜けた表情で立ちすくむ悠仁へ向けて一度だけ微笑むと音もなく悠仁の前から姿を消した。


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