悠仁seid
病室の隅の窓辺で花束を包む白い包装紙を乱雑に破く、俺に向けて爺ちゃんが静かに口を開いた。
「悠仁……最期に言っておくことがある。オマエの両親のことだが」
「いいよ。興味ねーから」
最期と言いながら、俺の両親の事ついて語り始めようとする爺ちゃんを、俺は''興味ない''の一言でばっさり切り捨てる。
そんな態度に、一度は真顔になる___俺の祖父事、虎杖倭助。
だか、直ぐ気を取り直し、今度は更なる大きな声で両親の事を口にし始めた。
「オマエの! 両親! ことだが!」
「だから、興味ねーって。爺ちゃんさあ。死ぬ前にカッコつけようとすんのやめてくんない?」
「いいよ、いつも通りで」又もや一言で爺ちゃんの言葉を片付けた俺に、わなわなと爺ちゃんは肩を震わせた。
「男は、カッコつけて死にてえんだよ! 空気読め!!」
''クソ孫が!''と怒鳴り散らかす爺ちゃんを横目に、俺は買ってきた花を花瓶に移していた。
「花とかもいちいち買ってんじゃねえ。貯金しろ」
「爺ちゃんにじゃねえよ。看護婦さんに買ってんだ」
「尚更だ馬鹿。つーか。部活はどうしたよ。こんな、消毒くせえ所でサボってんじゃねー」
今度は、口煩く部活の事を話題に出す爺ちゃんに、面倒くさいなと思いながら、爺ちゃんの方へちらりと視線を向ける。
「うるせえなあ。部活は5時前に終わんの! 俺だって、暇じゃなきゃいちいち見舞いなんてこねーよ」
「ケッ。ゆとりかよ」
悪態を吐きながら、爺ちゃんは身体事、俺から視線を背ける。
「悠仁……」
「んー?」
花瓶に花を生けながら、気抜けた返事をする俺に、爺ちゃんは背を向けたまま、また静かに口を開く。
「オマエは強いから人を助けろ。手の届く範囲でいい。救える奴は救っとけ。迷っても感謝されなくても、とにかく助けてやれ。オマエは大勢に囲まれて死ね。俺みたいにはなるなよ」
爺ちゃんは、何かを思い出すかの様な口張りで何かを語り始めた後、「もう一度、死ぬ前に会いたかったな……」懐かしい気な声でボソボソと呟いた後、そのまま黙り込んでしまった。
「……爺ちゃん?」
俺が声を掛けても、''ピクリ''とも微動だにしない爺ちゃんに、俺は急いでベッドの直ぐ側に設置されていたナースコールのボタンを押した。
「はい。どうされました?」
優しい看護婦さんの声がナースコール越しから聞こえてくる。
「……虎杖さん?」
看護婦さんの声に、俺は目から零れ落ちてくる涙を必死に堪えながら「爺ちゃん 死にました」重苦しい声で看護婦さんに告げた。