平和に行きましょう。
めがわるい
「沙くん、君って目が悪いらしいね」
にやにやと底意地の悪そうに細められた右目と口ぶりだけでは真意は計りづらい。苦無や手裏剣、万力鎖などの道具の手入れをしていた手を止め、沙はわざとらしく嘆息した。
「伊作から聞いたのですか」
「あぁ、聞いた。遠くは良く見えるが、近くはからっきしだと」
「えぇ。お陰で、ここに来た最初の座学は底辺もド底辺でしたよ。何せ、文字が読めても何と書いてあるのかわからないんですし、文字だって汚い」
「私としては、それをほとんど悟らせてない振る舞いを評価したいね。6年は決して短くない」
「そうですか。いうて、苦労したつもりもないのですが」
文字が見えずに書物が読めないなら、聞けばいい。同じ本を読む伊作に音読してもらい、耳で覚えた。
書く場所がずれて汚い文字は、とにかく練習した。判紙は山のように無駄になったが、感覚で覚えた。
遠くがよく見えるからといって射撃や投擲の才がある訳ではない。
「でも、気配には聡い」
「気配というか、音ですよね。皆忍者だから足音立てないけど、息はする。動けば衣擦れはする。匂い……は、雑渡さんが特徴的すぎる」
鉄錆臭さと包帯と、その他諸々の体臭。すん、と鼻をならせば僅かなそれらが気になって、他の匂いが紛れてしまう。
「なんです、今日は過大評価をする為にお越し下さったのですか?」
「いいや。本当は、夜目が効くと聞いてね。どんなものなのかと思った次第さ」
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