平和に行きましょう。
かみよめ
「彼女は黒百合さん。ある霊山の男神に愛憎半ばに大分理不尽な理由で嫉妬された挙句取り殺されそうになり、やむを得ず引っ越した先の土地神に先祖の縁で見初められ、結局その二人の神の激情を買い、呪い殺された方です」
「初っ端からエグい自己紹介ですね!?」
「わー、それで地獄にいるっていうのも、俺達が言うのも何だけど酷いね」
「神の思惑は我々に理解し難い部分がありますし、特に黒百合さんは若く罪も犯さない内に亡くなられた被害者です。裁判自体は滞りなく進み、天国、あるいは転生と決まっていたんですが…」
「あ、何か読めた!二人の神様のどっちか、もしかしたら両方が黒百合さんにちょっかいかけ始めたんでしょ?」
「おや、何故分かったんですか?正解です」
「だって昼ドラみたいな展開だからね!すっごいスケール壮大な三角関係」
「お前いつの間にそんなもん見てたんだよ…」
「私としては、テンプレな愛憎劇を見ていた気分でしたけれど」
「それはそれでいいのか当事者」
「実際、現世ではその地域で大地は割れるわ海は荒れるわ、正しく天災が起きてシャレにならなかったんですがね」
「神様の喧嘩って傍迷惑だな…」
「特に色恋沙汰なんて犬も食べませんよ」
「俺は食いつくけどね!」
「神様の愛なんて、所詮は人間のそれとは違うのです」
「死んだ目をしながら言うと説得力あるね…」
ハイライトのない目がすぃ、と流れる。切れ長の目というのはこれが中々色っぽく、下ろされた黒髪や嫌に白い肌もあって名前に恥じない美しさを見せる。
「シロさん、もう何百年か夫と夫婦をしていますが、私そろそろ辛いのです」
「う、うーん…俺犬だけどいいの?鬼灯様とかの方が、もっと色々アドバイスしてくれそうだけど」
「人型をした男性に一人で会いにいくと、それこそ酷い目に遭うので…。ご迷惑なら帰ります…」
「うわああああ典型的なDVじゃん!家庭内暴力!いっそ旦那さん連れて来て鬼灯様にぶん殴ってもらおう!亡者体験させる?」
「恨んでいる訳では無いんです!」
慌ててふるふると首を横に振る。黒百合は、確かに己の身を不遇とは考えているが、それでも割合幸せに日々を過ごしているつもりだった。
「ただ…、愛されてもいないのに側に居続けるのは…流石に神経が参ります…」
「何で結婚したの?」
「地獄の果てまで追い掛けられて、頷かないと何度転生しようと祟り殺すと…」
「脅迫怖!それって周りに相談出来なかったの何でなの」
「周りに神しかいないので…理解が得られず…」
「完全に夫の実家に越してきて孤立したお嫁さんだぁ…」
常識がそもそも全く違うのだ。
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