平和に行きましょう。

天さん3


 岩柱てめぇこのやろう。
 誰も声に出さないが現在柱稽古にて悲鳴嶼邸にいる隊士の殆どの心が一致した。滅多に周りの反感を買うような人柄ではないが恐らく向けられる憎悪では風柱すらぶっちぎってトップだろう。
 たゆんと揺れる乳房にキュッと引き締まった小さな臀部。ほっそりとした手足まで美しい天柱、雲居沙が悲鳴嶼にくっ付いていた。鬼殺隊で年々囁かれる「筆下ろししてもらうなら」ランキング殿堂入りの皆のお姉様を侍らせ(語弊)ていれば、それはもう殺意の対象。抹殺だ。岩柱だから出来ないけど、柱じゃなかったら皆でタコ殴りするレベルの大事件だ。それでも多分頭地面にめり込まされて終わるのだろうけど。
「チクショォ​───────!!!!!!あのオッサン許せねェ​───────!!!!」
 善逸の高音域絶叫がほぼ全員の心を代弁している。

「重石代わりって知らないのですねぇ」
 隊士達の悲鳴嶼を見る目がかなり殺意じみた尖り方をしているのは普通に気付いている。沙だって阿呆ではないので自分が女として恵まれた体であり、異性から非常に良く目に映るというのも自覚している。している上で、悲鳴嶼にくっ付いたりして傍にいるのは面白半分、必要半分だからだ。
 沙の骨は異常に重い。しのぶに診察してもらった所、骨密度というものが凄まじいらしい。とても重い物を乗せられても潰れないし、衝撃を食らってもかなり頑丈で折れないだろう、ということらしい。「ほんとに鉄筋で出来た骨格ですねぇ」とにこやかに言われたが、全く褒められた気はしなかった。
 そして、そうでなくても沙の体格は良い。上背があり、それでも華奢とはいえ150cmが平均の女性と比べても筋肉や諸々の肉を合わせるとかなり重い方だろう。そこに加えて鉄の塊のような骨の重みをプラスすると、見た目では想像出来ない重量となっているのだ。正直、隠の中でも沙を運ぶ時かなり苦行らしい。
「お前が乗ると良い負荷になる。それに、それ以上体重を落とすとなると力が落ちる……今が最も適した状態だろう」
「……殿方の前では鳥のように軽くなりたいのが女心です……」
 悲鳴嶼の修行になるレベルということは普通にかなり重いのだ。悪気がない所か長所として扱ってくれる優しさは理解出来るが、やはり間接的に重いと言われるのはグサリとくる。
「……すまない」
「いえ、こちらこそ意地悪を。お陰で柱になれたし、貴方のお役に立てますから、良い事の方がやっぱり多いですもの」


 見世物ではないが、参考程度にはなるだろう。
 岩柱から一時稽古を止めて集まるように言われた先は拓かれた稽古場のような場所で、村田達が着く前に岩柱と、何故か天柱がいた。2人とも隊服姿だが羽織りはなく、日輪刀も帯刀していない。そもそも岩柱と天柱の日輪刀はどちらも刀の形ではないし、少なくとも武器になるようなものもない。
「これより岩柱、悲鳴嶼さんと私、雲居の手合わせを行います。とはいえ私たちの得物は互いに特殊なので、公平を期すために素手の組手となります。見世物ではありませんので、死ぬ物狂いで参考にして下さい。出来なかったら後々死ぬと思って下さい」
 徹頭徹尾無茶苦茶を言いおる。嫋やかな雰囲気のまま死刑宣告する天柱に、手を合わせたまま待つ岩柱。組み合わせはちぐはぐだし、男と女の体格差が大きく開いた上での組手となると勝負になるのかという不安はあった。

 正直な所、悲鳴嶼も雲居もお互い手合わせがまともに出来るのはお互いだけだった。雲居が言った通り得物がそもそも刀の形をしていないし、素手となると確実に無傷では済まない。片や真夜中から夜明けまで延々頭蓋を割り続けた剛腕の男、片や鬼の首を手足で捻り切ってきた体術の女である。
「関節キメてるんですから痛がってもらえませんかね……っ!」
「悪い」






















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