平和に行きましょう。

不憫鬼


 がり、り。ぶち、ぶちっ。ぱきん。
 肉と骨を口に含み、咀嚼する音が怖気と共に耳に届く。喉が粘つき、肺腑へ絡むようなねっとりとした臭気がこの小屋に充満していた。
 この部屋に人間は1人。しかし息遣いは2つあった。今しがた唯一の戸に立つ男は、月明かりすら入らない小屋の隅に、「それ」がいるのを目に留めた。向こうも、気付いたらしい。
 ぴちゃ、ぴちゃ……と舐め取るような水音が止まる。
「何だよ。殺す気になったの?」
 心底うんざりしたような、しかし一縷の望みを覗かせた小さな声は年端もいかない若さだ。行灯を向けると、想定より小さな影法師が壁に登る。
 影法師には、膝から下が無かった。血でひたついた着物の裾から伸びる真白い太ももは血痕でまだら模様を描き、止血もしていない傷口は僅かに凝固しつつある血がこびり付いて生々しい肉の色を見せていた。しかし治る気配はない。
 男は腰に携えていた刀の鍔を鳴らした。影法師の娘は鷹揚にそれを眺める。一瞬行灯に照らされた僅かな抜き身が現れたが、男が己の指を押し付け出血させただけでお役御免と戻された。
 ぽた、と赤い雫が床に垂れる。それはほんの一滴、この小屋に飛び散った赤に比べればちっぽけな一滴だろう。けれど影法師にとってはそうではない。撒き散らした血の空気の中でさえ嗅ぎ分けられるその甘露な傷口と滴る血に、飢えた身体が一瞬で昂った。
「ぐ、ぅぐうぅ……っ」
「どうした、喰わんのか」
 眼前に突き出された血の滴る指。噎せ返る程の小屋の中でさえ誤魔化せない人間の血。
 自らの血肉がこびり付いた咥内から小さな舌が覗いた。太く、節くれだつその指先をちろりと舐め、ゆっくりと咥内へ招き入れた。

 

鬼になった沙ちゃん
人は喰いたくない。喰いたくないけど本能が求めてるから死ぬより酷い飢餓感に襲われている。なので自分を食べて凌いでいるけどあんまし上手くいってない
鱗滝さんにいじめられてる(語弊)。肉は食べてないけど時々血は吸わせてもらって辛うじて自傷した分を治している
血鬼術は治癒。血液を使って治すが、自分には使えない。鱗滝さんの切った手を治す程度にしか使ったことがない

沙ちゃん→鱗滝さん
マジでもう勘弁して欲しい殺して欲しい。死にたいのに藤の木を使った小屋に閉じ込められて外に出て焼身自殺も出来ない辛み
鱗滝さんが指切って血で誘惑してくるのに毎回負ける。負けないよう自分の血で臭い紛れさせようとするけど人間の血強すぎて無理。「指でも食べたら殺してやる」が最早慈悲。だけど食べたら最後の矜恃が消えるから絶対食べたくない。食べる以外は何でもやるから殺して()
この爺さん怖いたすけて

鱗滝さん→沙ちゃん
人間喰うぐらいなら自分食べるなんて頭が別方向にやべぇ鬼もどきの生き物を閉じ込めてる。本当に食べてないから鬼として有り得ないくらい弱々しいのは知っている。人を食わない鬼は果たして鬼なのか。だから娘を殺すに殺せない。せめて自分の指1本でも食ったなら鬼として斬ってやれるのにと思ってる
指切って飯代わりに血をやっている。猫みたいにチロチロ舐めて吸ってくる顔は好き

ちなみに沙ちゃんの体は長年人間の肉を拒み1人の血しか吸ってこなかったので豆腐並みに弱い。なので力の弱い沙ちゃんは自傷は出来るけど、鱗滝さんの硬い指を噛みちぎる程の咬合力はない























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