平和に行きましょう。

ふらふら


「悲鳴嶼さんはこちらの部屋にいます」
 木目のひんやりとした空気と静けさばかりが沈む廊下、数ある内の扉の前で胡蝶しのぶは自分より幾分か年下だろう少女へ案内してやっていた。アオイと同じくらいか、1つ上か。屋敷の中で風呂敷を抱え、酷く緊張した面持ちで立っている彼女は、不謹慎だが普通で弱々しかった。実の所面識はあるのだが、4年以上前のほんの僅かな数日間の記憶が彼女の中でどのような形で残っているのか不明瞭である為、あくまで初対面のように、事務的な態度に留めている。ただ、しのぶが姉と共に押し掛けたあの日、沙代の目に確かな悋気の色があったのは覚えていた。それを理解していたから、しのぶと沙代は4日間の生活で互いの境遇に同情と理解は寄せれど友情に近い物は抱かなかった。それは決して悪感情からくる距離でもなく、ただただ心の中にある思いが重なることがなかったが為の良き無関心さだった。
 キィ、と金具同士が擦れる甲高い音と共に扉が開いた。どうぞ、と促すと沙代はそろそろと遠慮しがちに部屋へ踏み入れた。
「行冥さん」
 鈴を転がすような声が呼ぶ。それに応えて、悲鳴嶼は腰掛けていた寝台から沙代の方を向いた。
「」



































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