平和に行きましょう。

山桜桃さん5


 細く切り上がった眉と、つり上がった目尻。切れ長で、きっと研いだ刃先のように鋭いのだろう。顎の輪郭は丸く、やや尖っている。肉付きの柔らかな、女性的な形をした顔立ちだと分かった。ふるり、と瞼と口角が上がるのが分かる。ひんやりとした肌の下にある筋肉が動いたから、触れている限りは悲鳴嶼にだって今目の前の男がどんな顔をしているのか理解できた。
「ご感想はあるかい」
「……猫よりは硬い」
「一緒にすんじゃないよ」
 く、く、と喉の奥から低い笑みが聞こえる。唇から漏れた吐息が顎にかかった。酒精混じりだが、桃の果実の甘い匂いもする。
「俺も触っていいかい」
 言うが早いか、男の指が悲鳴嶼の頬をつついた。指先からゆっくりと滑り、手のひらがぺたりと付く。あぁ、こいつ桃を食った手で触ったな。ベタつきはないが、濃くなった桃の匂いがあご先を撫でる。
「思ったより柔い。あぁ、それとヒゲの剃り残しがある」
「最後は余計だ」
「俺とお前の目ん玉、一つずつ交換できりゃあいいのに。そしたらお互いに見えるぜ」
「中途半端に見えては戦いにくい。隻眼の隊士は早死だ」
「たられば話くらい乗ってくれよ」


 どこぞの祭りの神を自称する柱と似たような見てくれをしているからか、山桜桃も割と派手で賑やかな方だと思われやすい。実際女装や話し言葉も個性しかないので間違ってはないし、己の美貌に自覚があるのでそれ相応の魅力的な振る舞いをするように心掛けていた。とはいえ静かで地味なのが嫌いという訳でもない。むしろ、そちらの方を好んでいる。
「酒は飲むだろ?」
「柱仲間との食事以外では滅多に飲まんねェ」
「」






























prev next
Back to main nobel