平和に行きましょう。
かたくりよん
ようやっと姿を見せたカタクリの右手には、何事か分かっていなさそうに手を引かれたガラルニャースがぽつんと立っていた。
どちらかというと無口で、自主性に欠けていると思っていたあの娘が1人でふらりと出掛けていたのも意外だが、よく思い出せばガーディを素手で捕まえるくらいの行動力はある。育ち盛りの子供であるし、朝から晩まで遊び歩ける体力もある。
軽い土汚れ以外に怪我もないカタクリとは対称的に、ニャースの方はかなり薄汚れていた。雨に打たれた毛皮や野生ポケモンらしい臭いもするし、ニャースの空いた手にはピッピ人形が握られている。こちらもかなりくたびれていて、解れていたり汚れが目立つくすんだピンクの人形だった。
「カタクリ、一体いきなりどうしたんだ?ホップとメルが寂しがっていたし、おばさんもオレも心配したんだぞ」
「…ごめんなさい」
俯いたカタクリが震える声で謝った。泣かせたくなかったが、既にその目からは大粒の涙がポロポロと零れ始めていた。ニャースもそれに気付いたが、涙を落ちるキラキラした雫として興味深そうに覗いているようだった。
「…このニャースは捕まえたのか?」
大きく首を振る。
「あんな、あんな…」
カタクリから聞き慣れないコガネ弁が出てき始めたのは、取り繕うことも出来ないまま素直に話すということだ。
「この子な、ずぅっとひとりぼっちやったん。友だちおらんでな、落とし物の人形といっしょやったって」
それだけ聞いて、ダンデは大方理解した。
「ひとりぼっちのニャースが可哀想だったから、自分とそっくりだったから、連れて帰ったんだな?」
「んっ…」
周りに野生ポケモンはたくさんいるのに、本来の生息地域と異なる場所に迷い込んだニャースは一人ぼっちのままさ迷っていた。途中見つけた人形をお供にした迷子のニャースは、偶然1人遊びをしていたカタクリに見つかり、そのまま手を引かれてブラッシータウンにまできたという。
コガネ弁のきついカタクリの言葉をなんとか纏めると、そういうことらしい。ニャースもよく鉱山を跨いでこの片田舎にまで来たと感心する。カタクリも、感受性が豊か過ぎたが故にここまでニャースに自己投影してしまったのだろう。
「とりあげへんのよ、一緒にあらうんや」
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