平和に行きましょう。
かたくり5
やや吊り上がった切れ長の目に、ゆるりと微笑みを作る口元。短く整った髪と丸みのある輪郭を乗せる首筋は折れそうなくらい細くて、少年にも少女にもみえる中性的な雰囲気は掴みどころのなさもあった。
顔と格好が小綺麗で、初参加からセミファイナル進出を果たす伸び代のある選手。これで暇なご婦人方から人気がでない訳が無い。
「……とても、とても疲れました」
真顔のままソファに体育座りで丸くなったカタクリは、ぽつりと呟いた。
「あぁ、お疲れ様。インタビューと撮影会があったんだって?」
「帰ろうとしたらファンだっていう人から握手してほしいって言われて、頷いたら延々と…」
「カタクリは頼まれたら断れないからな。次からは断る勇気も持つんだぞ!」
「…善処します」
「それに、オレ相手に敬語もそろそろやめるべきだ。オレはチャンピオンではないし、君もチャンピオンじゃあない。オレたちは対等で、昔からずっと近所に住む家族だろう?」
「そのうち勝手に取れますよ…」
カタクリの頑なさは今に始まったことではない。5歳の頃から既にそうだったことを思えば、三つ子の魂百まで。余程の切っ掛けがなければ治せないとみていい。
「…というか、なんで私の写真とかいるんですかね。チャンピオンになったメルで十分でしょう…」
「メディア露出が嫌なら、こういった仕事は今後断ることにしようか」
「断れるんですか!?」
「メルはリーグ委員会がマネージメントすることになってるが、君はオレのと一緒に管理しているぞ。ちなみにホップのやつはこういった仕事は全部蹴ったが」
「聞いてない!何それアイツだけずっるい!!」
「だから今日の仕事だってオレが伝えていただろう?もしかして今気付いたのか?」
「最近やたらダンデさんと一緒だと思ったけど、そういうことか!」
騙されたああああ!!と叫ぶままニャースを抱き締めて床を転がるカタクリを、誰が写真集の中にいるカタクリと同一人物だと思えるだろうか。
写真の中では寡黙で、気難しく、それでいてあどけなさも残す顔立ちが凛々しいと評判だというのに、中身はいつまでも変わらない。かなり抜けたおっちょこちょいのままだ。
「」
昔から一緒にいる幼馴染みの兄。
友だちという程気軽で対等でもなく、知り合いというには余所余所しく。家族ぐるみの付き合いだが、それは関係を示すには少し足りない気がした。
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