平和に行きましょう。

りょこう


「なんていうか、姉ちゃんの戦い方は魅せる癖が付いてんだな」
 クチナシが序盤から感じていた違和感の正体は、相対する女とポケモンの演技だった。いかに試練へ工夫を重ねて突破していくかがキモである島巡りとは異なる、人に見せることが前提の指先まで洗練された動きのバトル。見ている者が手汗握る展開へ運んでいく手馴れた様は、それなりの場数とかなりの実力が無ければ到底行えまい。
 ミロカロスを出していた女…というより未成年な気がする少女は、「あぁ」と合点がいったようにぱちくりと猫目を見開いた。
「すみません、カメラも回ってないのに」
「カメラ?あー…姉ちゃん、旅行者なんだっけか」
「ガラルからです」
 ガラル地方は、ポケモンジムでのバトルが興行として成り立つ地方だったはずだ。島巡りや他地方のジムに挑むのなら1体1で観客がいないが、あそこはスタジアムで恐ろしい数の客に見られながら戦うことになる。そんな地方でポケモンバトルするのだから、自然と他人の目を気にする立ち振る舞いにもなるだろう。
「旅行者ならマリエシティにでも行きな。こんなおっさんと不良しかいないポータウンにまで来るもんじゃねえしさ」
「そうしたいのですが、連れがここら辺で迷子になったんです。だから交番に来たんですけど」
「特徴言ってみなよ。運が悪けりゃポータウンの中で見つかるかもよ」
「背が私より頭2つ分高くて、髪が長くて、髭が生えてて、やたらきらきらした目で、リザードン連れてます」
 ポケモンかと思いきや普通に成人男性だった。
「そこら辺にいるバカ共がバトル挑む前に見つけないとな…。はぁ…」
「タカられる心配はないですよ。ガラルで10年無敗伝説築いた人なので」
「バカ共の心配しねぇといけねぇな…」


「おじさん知らなかったの?というか、聞いてなかったの?」
「何の話してんのかも知らねぇよ…」
「さっきここまで案内してた人達だよ!」
「あぁ、あの髪の長い兄ちゃんはガラル地方のチャンピオンなんだろ」
「正確に言うと元で、今はリーグ委員長だって。あと一緒にいたあのお姉さん!」
「あの姉ちゃんもなんかあるのか」
「CMにめちゃくちゃ出てるモデルのカタクリだよ!どっちもガラルの超!有名人! 結構偉い人達!」
「結構偉い兄ちゃん達がこんな所で迷子になるなよ…。にしてもアセロラはよく知ってんだな」
「お兄さんの方はククイ博士から聞いてたけど、カタクリさんはテレビに出てるからね。ほら、ミロカロスの化粧品の」
「あぁ、あれがあの姉ちゃんか」



「ところでダンデさん。先程の警官と女の子がどなたか知ってますか」
「いや、知らないが…」
「ウラウラ島のしまキングとキャプテンを務める人達だそうです。つまりこの島のトップ達です」
「……」





 



「それで、バトルツリーの視察とアローラチャンピオンとリーグ創設者さんとの対話はご感想は?」
「最後のダブルバトルで引き分けになったのがとても熱かったな!ククイ博士のウォーグルがかなり厄介だったし、カタクリのミロカロスの粘りは隣にいてハラハラしたぞ!」
「まぁそうそうにダウンしないようにはしてますから…って、いえ仕事の話です。丁度4人いるからって始まったバトルはいいんです」
「秘書らしい仕事できるからって張り切ってるな、カタクリ」
「ニャース、ダンデさんのスーツで遊んでおいで」
「茶化して悪かったからやめてくれ」
「ちゃんと書類にするんですからね。じゃあ、キャプテン、しまキングとクイーン、神と崇められるポケモンとか話しましょう」
「…あぁ、うん、そうだな…。アローラの慣習は俺たちガラルの人間からすれば、かなり不思議ではあるよな。俺たちのジムチャレンジは彼らの島巡りだし、ジムリーダーはキング達だ。でも、リタイアした者への扱いがとても雑でしかも救済措置が大して無い。ククイ博士がリーグ開設を目指してアローラに新しい風を吹かせたがった気持ちもオレは分かる」
「ヒエラルキーがはっきりした場所ではありますよね。神のカプに、その神自らが選んだ島の王達、そして島巡りで試練を課すキャプテン達。リタイアして実力を認められずに半端モノ扱いされるトレーナー」





「ガラルってそもそも夏とか暑さに縁がなく、つまり基本涼しい気候です」
「対してアローラは山を除けば常夏のリゾート地。結論から言うと、貴方の正装はかなりやばい」
「……そのアドバイス、船に乗る前に教えて欲しかったぜ」
「私もククイ博士の半裸を見てヤベぇと気付きました」
「見てくれ、リザードンも…」
「しおれてますね」




























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