平和に行きましょう。

かみさま


 さてなぁと、久久能智は首を傾げた。およそ千年ほど前から、妙な人間がぽこぽこ増えているのは、なんとはなしに知っていた。木々の神として、旧い神木の木霊に悪さする人間から木を生やしたりする久久能智も、多少は世情について関心を持つ。
 気が付けば髪も服も、下手すれば話し言葉も様変わりする人間たちを見るのは忙しなくて仕方がない。けれど今までのように気紛れに覗いても追いつけまいと、久方ぶりに人里を注視してみようと思い、久久能智は木霊のように人型を取った。時々気に入った人間と話す時に使うそれは、男のようにも女のようにも見える不可思議な顔をしている。流石に全裸では慎みもへったくれもないと知っているので、滅多に使わない権能を使い、パッと見て気に入った人間と同じ着物を作り出した。
「これでいいか」
 小汚くなく、そこそこの小綺麗さは心得ている。連れていくなら全力で見た目を取り繕うが、目的は謎の人間と暇潰しも兼ねた人里の観察。山の中で年に1人2人くらい木にしても怒られないが、目立つ人里でそんなことしたら流石に天上に御座す神々に怒られるので、それも程々に。


 久久能智は子供が好きだ。ついでに子供に優しい大人も好きだ。
「たんと食えよ。太らないと冬が越せんぞ」
 とりあえず毒がなくて美味い山菜と、同じく毒がなくて甘い果物。それぞれ決して小さくない籠にたんと用意してやり、久久能智はふふんと胸を張った。この寂れた山寺にいる人間は皆慎ましやかに生きている。特に寺の坊主は、人間で言えばまだ成人もしておらぬ身でありながら7人もの子供を養って食わせているのだ。子供たちも、坊主を慕いながら日々助け合って仲睦まじく過ごしている。はぁ、なんて素晴らしい。
「おま、おまえ食わないと肉が付かんだろう!何をおま、ばか!子供も含めてお前も腹一杯食わせる為にそれだけ用意してやったんだぞ!そうだ!よし!いいぞ子供!食わせろ!!」



































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