平和に行きましょう。

あざとい


 ぽってりとした唇がわななくように震え、それからか細い声で「ありがとうございます」と囁いた。
 雪のように白い肌は赤く染まり、切れ長の目尻には真珠大の滴が今にも零れそうに溜まっている。濡れた瞳と目が合って、呼吸の仕方を忘れたかのように一瞬、喉がひくついた。
「その、なんとお礼申し上げたら良いか…」
「い、いや…この程度訳はない」
 山奥の夜、どこぞとも知れない道を無防備に歩く美女。状況の不審さに頭が回らない男が、そのまま気付かずに口を開こうとした時。
「貴方のお陰で課題が捗った」
 ニヤリと音がつきそうな笑みで女が言い放ち、その言葉を理解するよりも速く、男の脳天に鈍い衝撃が走った。

 忍術学園からそこそこに離れた山道。近頃山賊が出ると噂により、滅多に人が通らなくなったそこで、質素だが丁寧に着古した着物を着た娘……にしか見えない少年が、己に課せられた課題達成への爽快感に震えていた。
「計画通り…」
 目の前で男が崩れ落ちたのを確認し、沙は某死神ノートを操る青年のように悪どい笑顔を浮かべる。相手が真っ当な怪我人なら手当てをする為にすぐ駆け寄るだろうが、生憎ながら山賊の類にやる貴重な包帯と薬はない。
 男の脳天に落とした救急箱を回収し、火が落ちた提灯をまた灯しながら、未だ途中の「課題」を達成しようと手早く動いた。まだ時間に余裕はあるが、不確定要素の多い課外において時間を掛けるメリットは滅多にない。
「よーっしゃ、課題見っけ」
 劣化した火縄銃を手早く風呂敷に包み、回収する。暴発の危険がないことは既に確認済みだ。そもそも山賊風情に火薬や弾の用意なぞそうそう出来もしないし、よしんばあったとしても湿気の多いこの季節、特に山奥では素人の管理で駄目になる可能性の方が大きい。
「武器商人なんて物騒なことはやめときなよ、山賊のおっちゃん」
 気絶した男へ合掌し、


















































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