平和に行きましょう。
しんださき
「死んだその先に、何があると思います?」
犬歯を見せるような獰猛な笑い方は、これっぽっちも似合わない癖に妙な迫力があった。
「さぁ。来世に期待したことはあったけど」
汗ばんだ体はしっとりと濡れて、白い肌は熱に浮かされたように赤く上気している。あちこちに蒔かれた鬱血痕を見ていると、知らずのうちにまた唇を這わせて数を増やしていく。
「神仏に縋るには、今更ちょっと無理があると思うよ、私達」
「元より期待してないですよ、その類には」
信仰心はないが、現実主義者の物言いでもない。失望した宗教家のような、妙なニュアンスを含んでいる。
今回の後戯は何だかおかしなことになりそうだ、と嘆息した。
余韻に時々体を震わせる沙を抱き竦め、布団の上に転がってまた抱き締める。相変わらず細い体だ。女のようにしなを作るのが異様に上手いからか、今夜も随分搾り取られた。
「きっと先に死んでも、冥土であんたを待つ事は出来ないんだ。ここが地獄でもない限り」
「今日はやけに弱気だな。いつもの可愛げのなさはどうした」
「毎日思ってることです。口にしないだけで」
「ふぅん」
お返しのように沙の唇が鎖骨を食む。猫にも似た仕草で音を立てながら吸い上げ、舌を這わせて舐めてくるのは存外心地好くとももどかしい。
「それ以上はやめろ、しばらく使い物にならなくなるのは困る」
「忍組頭ともあろう男が、数度果てた位で音をあげるので?」
「いや、お前の腰と尻を殺す」
「…………」
「色狂いになりたいなら続けて構わんよ」
まるで獣同士のまぐわいだ。
白く細い体に残された鬱血痕はともかく、背や脇、として腰と脚にとついた赤い手形や引っかき傷は尋常でない情事の仕方を想像させる。
「口淫ヘッタクソだね。いつ噛みちぎられるかとヒヤヒヤしたよ」
「じゃかましい。あんただって途中で首締めかけたでしょう」
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