平和に行きましょう。
ハイヤ
エリス(ハイヤ)
ソティスが生み出した白きものの内の一人。一族の例に漏れず、濃さの違いはあれど髪や瞳の色はレア達と同じ
100年前の戦争で力を使い過ぎた上に視力を失ってしまった為レア達とは袂を分かち隠遁生活を送っていた。目元の傷や焦点の合わない瞳を隠す為色付きの眼鏡を掛けている。歩行用の杖を持っているが、およそ900年に渡る生活で殆ど健常者と変わりない動きが出来る上に戦闘も以前程ではないがこなせている
一時身を隠すためにフレンやセテスら父娘と暮らしていた。休眠状態になったフレンを預かり、目覚めた彼女を教団にいたセテスへ送ったのもエリス
送るだけのつもりがレアにとっ捕まり、懇々と説得されて教師として招聘されることになってしまった
女性とも男性とも見える線の細いシルエットで、中性的な声もあって「エリス先生の性別当て」という賭けが毎年始まる程。人の子が考えることは面白いと思う寛容さと放任主義から、生徒からは懐の広い先生だと慕われている
視力がない代わりに発達した耳と嗅覚で表情以上の感情を読み取って、何気に生徒たちの様子をセテスに教えている。教団自体は茶番劇だと一蹴しているが、レアやセテスに恩義を感じているのとフレンが心配であるのもあって付き合っている
剣の腕は護身術程度に留まっている。視力があった頃でも実戦そのものは得意ではなく、高火力の魔法を好む魔術師。またドラゴンやペガサス、馬といった動物らと心通わすことが特に上手かった
本名はハイヤ。文献にはキッホルと並びセイロスを支えた魔術師としてそれなりに多く名を残されている
「こんにちわ、イグナーツ」
「どうも、エリス先生。よくボクだってお分かりになりましたね!」
「絵の具と紙の香りが染み付いた人は君ぐらいでしょう。無論絵を描く人は他にもいますが、他の特徴で区別がつく」
「なるほど」
「何か用事がありますか、クロード級長」
「足音を忍ばせたつもりだったんですけど、こうもあっさりバレたのは初めてですよ」
「ははは、確かに中々の忍び足でした。でも、どうにも私にはそういった気配の方が読み取りやすい。隠し立てしたいのなら、堂々とした方が案外バレないものですよ」
「木を隠すなら森の中、ってやつですね」
「そういうこと。それで、どうしましたか」
「いやぁ、美しく秘密に彩られたエリス先生の素顔を少しでも拝められたならと思いまして」
「要は覗きですか」
「いやそこまでは」
「聞きたいことがあるならお聞きなさい。答えられない事は答えないので」
「流石懐の広い先生。それじゃ、エリス先生の性別は女性で合ってますよね」
「えぇ、そうですね」
「恋人や婚約者は?」
「盲の者を娶る者はいませんよ」
「俺たちと変わらない生活が出来るのに」
「君は優しい子だ。単刀直入に年齢とか聞かれるかと思いました」
「流石の俺でも淑女に年齢を聞くのは気が引けます。男なら聞いたかもしれませんけどね」
「ははは!」
「でも、配偶者がいないのは意外でした。てっきりセテスさんと結婚してるのかと思ってたんですがね」
「絶対にそんなことはない」
「あっはい」
「修道院は面白いね、気に入ったよ」
「…ハイヤ、お前のそれはどういう意味なのか分からないのが厄介だ」
「戦争の時以来だよ、殺意の目で見られたのは」
「教団も一枚岩ではない。邪な望みを持っている者もいるだろう」
「そうでしょうとも。私はセス…フレンがとても心配だからここにいる」
「私に薬品や暗殺者の類を仕掛けるのは無駄の極みですよ、ヒューベルト。やるなら課外授業や夜になさい」
「おや、なんのことやら」
「見えないからと顔に皺を寄せるものではありません。ただでさえ怖いと相談が来ているのに」
「…失礼ですが、本当に盲ですかな?実は見えている、なんて騙し討ちは有り触れていますが」
「声色で大概分かるものです」
「エリス先生って、魔導師ハイヤに似てますよね」
「帝国の建国に携わった者ですね。その名は殆ど書いていないのに、よく見つけましたね、リンハルト」
「名前が書いていないだけで、ハイヤと思わしき魔導師は結構書いてあるんです。盲目の大魔導士で、ドラゴンやペガサスと心通わせるのがとても上手い人」
「盲目で、皆さんに魔法を教えているので魔導師と呼べなくもないところですか」
「それに園芸に通じていたっていうのもあって。先生って温室の管理人もしてましたよね?」
「前の人が体を壊してしまった臨時ですが。次の人が見つかったと昨日言われたので、ようやくお役御免です」
「…エリス先生がハイヤだったら面白かったのに」
「君は可愛らしいことを言いますね。しかし、魔導師ハイヤにはきちんと最期が書いてあるじゃないですか。墓も帝国領にあるし、子孫もいる」
「没した記録も墓もあるのでそこに異論はないんですけど、子孫はガセみたいなんですよね。ハイヤは紋章を持っていたのに、自称している一族からハイヤと同じ紋章が輩出された記録がないんです。1代2代ならともかく」
「養子や直接の血の繋がりがないという線はないんですか」
「あぁ、なるほど」
「紋章だけが家族を表すものではないんですよ。紋章などなくとも、場合によっては血の繋がりがなくとも家族になれる。だから、その一族がハイヤの子孫を名乗るのは、そこに確かにハイヤの面影があるということでしょう」
「…ただの売名行為とは考えないんですね」
「あぁ、そういうのもありますね」
「エリス先生」
「なにか質問ですか、リンハルト」
「以前ハイヤの墓の話をしたと思うんですけど」
「えぇ、しましたね」
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