平和に行きましょう。

やべぇに


 骨が折れる音は意外と軽い。肉を叩く音は鈍い。それでは、肉が潰れて骨が砕け散る音というのは、どのようなものとなるのか。
 正解は、聞くに耐えない酷い音だ。
「先生、終わった?」
「応とも。子猫のように隠れる必要もなくなったぞ」
 からかいを含んだ、しかし嘲りはない声の元へ降り立つ。ぴちゃ、とつま先に小石でも雑草でもない感触があり、一瞬背筋が震えて胃の底が冷たくなった。だが、顔には出さない。

 おや、と微かに鼻を掠めた臭いに沙良は顔を上げた。ふらりとどこかに消えた書文が戻ったのかと思ったが、辺りを見回しても姿はない。だが、目を引くものはあった。いた、と言うべきだろう。
 随分と体格の良い男がいた。日本人離れして背が高く、一瞬熊を彷彿とさせる大きさだ。黒い制服は一見官憲のようだが、羽織と装飾らしき数珠を見るとそうでもなさそうである。
「先生とあの人、どっちが強いかしら」


 朝夕の鍛錬時を除けば、書文は大抵沙良と行動を共にしている。沙良自身はあまり外出するタチでないので、どちらかというと出歩く方だと思っていた書文へ「好きに外出していい」と伝えていたが、それでもやはり沙良の近くにいた。
 護衛や心配の類もあるが、どうやら外にはそこそこの手練と思わしき人物達が結構いるらしい。戦士が2人いれば上を決めたくなるのが人情だと宣うくらいに戦うことが大好きな李書文には、むしろ下手に出歩いて出会った時、自制できないと確信しているに違いない。一応この辺りでそう毎日戦い、殺しまくっては官憲に怪しまれるので、いっそ外に出ないという手段で自制し、結果的に沙良の近くにいることになったようだった。

「」































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