平和に行きましょう。

蘭と山桜桃


「編集さんて、弟さんいるんでしたっけ」
 執筆の合間、まだ締切も近くはない穏やかな日の夜。相変わらず編集という立場を乱用して山桜桃の家で夕食を用意していた蘭は、だし抜けに切り出されたそれに思わず振り返った。
 この、人にまともな関心があるかも怪しい先生が、自分に興味を持った。それだけで子どものように浮き足立ってしまう。
「……ええまぁ、いますよ。俺の4つ下です」
 努めて無愛想に……決してテンションが上がっているのを気取られないように……答える。
「探偵事務所をやってるんです。俺より出来の良い、立派な弟ですよ」
「ふーん……。仲良しです?」
「どういうのを仲良しだと思ってるかはともかく、そうですね。時々飯食いに行ったりするし、弟に子どもがいるんで、遊びに連れてってやったり」
「めちゃくちゃ仲良し。すごい」


「私にも弟がいたんですよー」
 現在形と過去形でかなり含まれる意味が異なる。
「なんていうか、7歳くらいの時に親が離婚しちゃって。お金がどうとかいう理由で、離れ離れにされちゃったんです。そっから弟がどうなってるのか知らなくて」
「会いに行こうとか、探そうとは?」
「んー……。父が10年前に亡くなってるのも、知ったのが去年とかいうレベルでして。今会いに行ったら普通に恨まれてそうで、怖いです」































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