平和に行きましょう。
あい
「好き……ですよ、えぇ。勿論じゃないですか」
のしかかられるような近さで、望むような答えを出してやる。実際、蘭のことは好きだ。好感が持てる。まずもって常人を置いてけぼりにしがちな山桜桃との会話を苦もなく、むしろ待ち侘びたかのようにこなす特殊な人間なのだから、嫌いになるはずもない。
だからこれは、ちょっとラッピングした言葉だ。中身そのままでは少し味気ないからちょっと装飾をしてあげて、喜ぶように。
どこに触れれば善がるか、何をすれば嫌がるのか。そんなことはもう知り尽くしたにも等しいというのに、俺は未だにあの女の考えていることの一割も理解できた気がしないのだ。
閉じ込めて生かしておくだけなら脳みその中身など特に重視しない。だが俺はあれの全てがほしい。理解して、管理することができれば……きっと、
「相手の全てを理解しようだなんて、例え実の親子でも無理なんですよ?ふふふふ、蘭さんは大人しく1割未満の私で我慢してください。ここまで理解して傍にいようとした人は、あなたが初めてなんですから」
「だけど、じゃあお前は俺といてくれるっていうのか。自分よリ親と歳の近いような男と暮らせるのか?」
「えぇ、実は暮らせちゃいます。私は私が自覚する以上にあなたが好きですし、まどろっこしいことをしなくても聞いてくれたら頷いちゃうんです。あぁ、でも流石に痛いことはいやですね。今までの行動からして、私が勝手にどこかへ行くのは死ぬ程嫌だけど、私を孤立させて自分に依存させようだとか傷付けるのはしない類の人だから大丈夫だと思いますけど」
「言って聞いてくれるんなら、どうして!どうしてあの時急にいなくなったんだ!あんたは嘘つきだ、ほんの少し目を離したら部屋から逃げるし締切だってろくに守りゃしない。急にバス事故にあって失踪するわ俺を庇って撥ねられて死にかけた!挙句にあの時少し買い物に行かせたら、そのまま、何ヶ月も帰って来なかった!どうせあんたは俺を置いてまた消える!!」
「痛い所突きますねえ。うん、そうですね、消えちゃうかもしれないです。あの時だって蘭さんがお迎え寄越してくれなかったらあのまま帰って来れませんでしたし。またいつかいなくなりますね」
「ほら、だったら……!」
「貴方も一緒でしょう?」
「な、え…」
「蘭さんだって私の知らない所で傷を増やしているし死にかけている。ほら、ここの刺青のところ。綺麗な円だったのに薄い傷が残って途切れちゃってる。これでも私、貴方の体結構好きなんですよ?私は確かに軽率に死にかけるけど、それは蘭さんだって変わらない。お互い知らない間に傷を増やして、それで憂いているんですよ。結構、お似合いだと思いませんか、私たち。」
prev next
Back to main nobel