平和に行きましょう。

アレな燭台切


 燭台切光忠にとって己の主は身体の弱い娘で、いつ儚くなってもおかしくない存在だ。
 ただでさえ脆い人間の中でも殊更脆弱でか弱い。自分たちを使役する者とはいえ、庇護しなくてはならないと考え至るのは自明だろう。だから厨を預かる係として、主の食生活を管理する義務があるのだ。
「石切丸さん、そこ、どいてもらえないかな?」
「すまないね。なんだかそこから嫌な気を感じたものだから」
 心の内で舌打ちをする。石切丸は燭台切よりも遅く顕現されたものの、本丸では十分に古参に入る刀剣男士だ。そもそも最初の頃は数日で自分や石切丸を含めた十数振りがすでに揃っており、そこら辺の感覚はお互いないのだが。
 何故だか、妙に気が合わない。無論性格上の不一致や元の主の関係上でギクシャクすることは多いが、特にそれらの理由もない石切丸がやけに目に余った。
「それは主への食事かい」
「そうだよ。だから早く届けたいんだけど」
 石切丸の視線が燭台切の持つお盆へ向く。豪勢ではないが、素朴で柔らかい家庭料理の品々はどれも主の大好きなものだ。基本的に何でも食べるので残すことはないが、それでも現代で特に馴染み深かった物は恋しいらしく、これらを出す度主が厨へ赴き、恥ずかしそうに素っ気なく「また作って」と呟いてくれる。構ってほしい下心故のものだが、誠心誠意込めたのも事実である。
 そう、出来立ての1番美味しいご飯を食べてもらいたいが故に急いでいるのだ。




「石切丸、ねぇねぇ見て見て」
「なんだい主…おや、随分綺麗な花を持っているね」
「お小夜がくれた」
 珍しく屈託なく笑う主に、思わずこちらまで頬が綻んでくる。
 短刀たちの中でも、特に性質上この少女と相性がいいのか、小夜左文字は沙を慕っているらしい。仏頂面のまま頬を赤らめ、そっと花を差し出したあの少年の姿が目に浮かぶようだった。そして小夜の年恰好から、長谷部のように邪険に出来る程の度胸と冷徹さもない為にそっと受け取る様子も。
「」




 石切丸が疎ましくないと言えば嘘になる。しかし、彼は沙の大切なガス抜き係で、本丸でもまとめ役になることが多い。何より、自分も世話になることがある。
 しかし、沙が石切丸の膝上で戯れる姿を見た時。












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