平和に行きましょう。

眉毛強襲


「お嬢さん、大丈夫か?」
 それは、後々ゆっくり考えると偶然が折り重なった奇跡的な出会いというべきだろう。ふと影が差し、顔を上げて目の前にいる男を見て、沙良はポカンとしたまま首を傾げた。
「あ、はい…、何とか落ち着きました」
 今まで男など、家族か刀剣男士ぐらいしか関わりのない縁遠いもので、大体「主」や「大将」としか呼ばれたことが無い。本丸の担当者や政府職員とも、事務的なやり取り以外で交流を持つなど出来やしなかった。だからだろう、不覚にもときめいてしまい、頬が熱くなる。




「あの不届き者めがっ…!!」
 長谷部は荒れていた。それはもう、分かりやすく荒れていた。
 ついさっき、長谷部が愛してやまない主が他の男との逢引の為に出掛けていった。それも、やや恥じらった可愛らしい女の表情で、だ。それをむざむざ見送ってしまうような己の情けなさや、今からでも追い掛けて縋り、全て台無しにしてしまいたい気持ちが自己嫌悪に繋がって、結局もだもだと玄関で整えた髪をぐちゃぐちゃと掻き分ける。
「あらぁ、あの子はもう行ったのかしら」
「御前様…、主なら先ほどお出かけになられました」
 入れ違いにやって来たのは、主である沙良の祖母、雪代だった。相変わらず老いてなお美しいかんばせを緩ませながら「あらあらまぁまぁ」と呟いた。
「沙さん、沙良とお茶しに行きたがってたから声を掛けようと思ったのだけど、遅かったのねぇ。あの子ったら、よほど楽しみだったのかしら」
「本多は、尾行して着いているそうですが…」
「ま、本当は貴方が行きたかったのでしょう?」






























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