平和に行きましょう。
お手軽恐怖
羽毛、達磨のような体、くるりとした真ん丸一つ目。
新手の妖怪であると言われれば即座に納得のいくフォルムで、しかし実際には主の作った使い魔だというのだから始末に負えない。大きさは精々1尺もないが、何がどうしてこうなったのだと問い詰めたい気持ちになった石切丸は、こつんと爪先に当たる主の使い魔を摘みながら溜息だけを吐き出した。
霊力を持て余す主の体質上、式神や術の類を教わり、使役出来るのは決して無駄ではない。千里眼を扱える奈を教師に教わったと、珍しく見た目相応の無邪気さで早口に教えてくれた様子は、審神者の成長以上の成果があったと確信していたし、実際それは嘘ではなかった。
だが、壊滅的にセンスが悪かった。悪いというならその一点のみだ。だがそれが最大の焦点なのだ。何が楽しくて一つ目鳥達磨をぽこぽこ召喚して部屋を埋め尽くさねばならない。お陰で主の部屋は魔境と化した上に、何なら一部逃げ出してちょっとした恐怖を振り撒いている。たまに悲鳴が聞こえるのはそのせいだろう。
へし切長谷部の機嫌がやけに良い。それに反比例して宗三の機嫌はやや悪く、不愉快といっても構わないくらいだ。
つい三日前くらいから、長期療養から戻った主が政府から何かしらの唆しを受けたのか、江戸城への出陣を繰り返すようになった。別段それ自体は構わない。遠征だって多く繰り出すようになって、今も第2から第4まで暫く隊員をローテーションしながら巡っている途中だ。問題なのは、主の初期刀の陸奥守が、昨日の真夜中から修行へと旅立ったことだ。
何故真夜中なのかは、正直宗三には関係ない。だが、修行に旅立った陸奥守や江戸城へ赴く蜻蛉切の代わりに近侍になった長谷部が、ちょっと欲を出した。
おおよその検討はついている。どうせ目の前で旅立つ初期刀を見て心細くなった子どもに向かって「俺に何でも申し付け下さい」とでも言って、欲しい言葉を無理やり引きずり出したに違いない。でなければ、普段構い過ぎて周りから接触制限が掛けられているような暴走列車が、あれほど嬉嬉として堂々と主の近侍を果たすまい。
普段なら、その暴走列車の手網というか急ブレーキ役を果たす宗三だが、今回ばかりはそうもいかない。江戸城出陣への第1部隊メンバーに、陸奥守の穴埋めとして急遽抜擢されて久方ぶりの隊長をこなしているからだ。練度は他の第1メンバーと比べてかなり低い宗三だが、夜戦かつ室内で有効な人員として他に行ける者がいなかったし、様子見で戦ってみた所、村正捜索で入った蜻蛉切より遥かに撃破率を稼げたので、悔しいことに喜ばしいことに、主の人事異動は今回ばかりは的確だった。籠の鳥よりマシで、きっとその内練度もかなり上がるだろうと思うと極も夢ではない。だが、今はこじらせたへし切の鼻をへし折らねば、という使命感が強い。
大事なものを隠したがるのは御手杵
後悔して償いたいのが日本号
共に過ごして生きたいのが蜻蛉切
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