平和に行きましょう。

主の構え


「主のなんたるか、とかは、向こうが勝手に色々考えてるから別に構えなくてもいいと思うけど」
 常時世話を焼かれているような子供が言うことは中々説得力に欠ける。長谷部が用意した茶を口にしながら、沙は「ほんとだよ」と続けた。
「一国一城の主だったり、元々良いお家の人ならまぁ大体育ちの良さとか色々持ってるだろうけど、私たちは一般人じゃない?」
「そりゃあ…まぁ…」
「身につけるマナーとかは、あいつらが自分たちに相応しいと思ったものを勝手に用意して勝手に教えてくるんだよ。顕現する人にも少し寄るから、一概に全てそうとは断言しないけど 」
 







「なぁ主はん」
「何?」
「仕事なんかほっといて、自分とダラダラしましょうや」
「珍しいね、お前がそう言うの」
 資材の確認や負傷状況をまとめながら、沙は顔も上げずに言った。そう広くもない物静かな執務室の縁側で、主をよそに茶をすする明石国行は気だるげな様は崩さず「誘っとるのに」と嘆息する。
 二ー刀、と呼ばれるだけあって、明石は殆ど仕事をしない。刀剣男士としての本分や内番は最低限こなすが、期待に応えることはないし、求めるだけ無駄というのが審神者共通の認識だ。時たま行われる新人研修でもそう言及される筋金入りである。
 沙が顕現した明石国行も無論その通りだが、保護者を自称するだけあって、余裕と落ち着きはあった。
「茶柱立っとるん、これ主はんのな」
「うん」
 休憩用のお茶請けだったおかきを食べる明石の姿は、長谷部や蜻蛉切が見れば目くじらを立てるか嘆息するであろうものだが、仕事に関して口出しや手伝いをすることはないので沙は許容している。プレッシャーがない仕事場というのは気楽なのだ。
 そしてその明石が、今の所大きな騒ぎや目立った軋轢のない穏当な者だが、ここ最近はそのアイデンティティが変化していると沙は見ていた。
「昨日、明石も特になったね」
「なってしもうたんですわ。自分、こない働く気なかったんに」
「ご飯ちょっとおまけしてもらってたでしょ」
「嬉しいけども、それなら内番軽くにしてほしかったなぁ」
「内番免除は近侍か部隊長だけだねぇ」
 沙は、何も全員に手間暇を掛けている訳では無い。暗黙の了解として、本丸の運営がメインと化している刀剣男士も少なからずいるし、逆に特攻隊のように出陣メインの者もいる。蜻蛉切は出陣がメインだったが、長谷部と持ち回りで近侍も務めていた。近頃は、明石がサボり目的に志願し沙も気まぐれでそれを許可したので、二人とも姿は見ていないが。
「長谷部はんと蜻蛉切はん?なんや、えっらい形相で自分に引き続きとか色々教えてきよるんですけど」
「聞き流してていいよ。効率良いのは確かだけど、肩凝るんだよね」
「サボれるんならサボりましょ」
「サボらないよ。力抜ける所抜くだけ」










































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