平和に行きましょう。

明石


「最近主はん寝不足なんか、よう昼寝するんですわ。お二人さん、なんや理由知りませんか?」
 と、蜻蛉切と長谷部に話を持ちかけたのは、意外なことに明石であった。働かないことで有名な刀が最近主の近侍を務めるようになったことは二人の知るところであったが、あの人見知りの気がある娘と上手く関わっているのは予想していなかった。
 自分にだけ気を許していたのに、と蜻蛉切と長谷部がそれぞれ思いながら、明石の言葉に首を傾げる。
「体が悪いとは聞いていないな。薬研が薬を調合することはあるが、それも月のものだ。副作用で眠くなるらしいが、これは月初めに終わっているから時期が合わない」
「あぁ、就寝が遅い訳でもない。寝付きの良い方であるし、時々不寝の番をしているが夜更かしをしている所は見た事がない。朝、長谷部殿が起こすまでは起きない方だ」
「ほぉん。ほんなら普通にただの昼寝ですかね」






















 この本丸を表向き取り仕切る女主は、その身に余る力を持つせいで人間としてまともに老いていくことも出来ないらしい。婉曲な表現になるのは、明石がまだ顕現され1年も経っていない新米で、実際に見ていてもまだ実感が湧かないからだった。
 齢12で審神者となり、寿命か他の何かで死なぬ限りは一生をそのままで過ごすことを決められた老いぬ童。聞けば不憫だが、主本人は悲壮感など皆無のまま日々刀剣たちと食事を取り合ったり遊んだり、それなりに面白おかしく過ごしている。
「よぉ、明石国行。主見なかったか?」
 にゅ、と襖から半身を覗かせた日本号は珍しく戦装束でもない上等な軽装を着ている。本丸で一二を争う酒飲みでも、こざっぱりと整えれば位持ちに相応しい威厳が出るのが面白い。
「自分とこには来とらんけどなぁ。蜻蛉切のところとちゃいますかね」
「ありがとよ。万が一見つけたら大広間に来るよう言付けてくれ」
「はいはい。ちなみになんの用ですのん」
「主の為の反物が届いたから、浴衣仕立てる為の寸法だ。三名槍に軽装を贈ったんだから、俺たちからも相応しいもん贈らねぇと三名槍の名が廃るってもんだろ」
「流石ですわ」
 見たまま子どもの主が、ただじっと言いなりにならなければいけない寸法を嫌って逃げ出したのは想像にかたくない。更に、位持ちの日本号と何気に歌仙が唸る教養を持つ御手杵が本気を出せば値段の桁が少々おかしい反物が用意されていてもおかしくなかった。唯一蜻蛉切が待ったをかけそうだが、この分だと三名槍全員が乗り気なのだろう。



「だぁから藤の柄が1番だろ!?景趣だって折角藤の一望できるやつにしてるんだ、揃えにしたらいっとう美しいだろうが!」
「でも景趣だって結構ころころ変わるだろ?なにもずっと藤にするんじゃないしさ。それに俺の選んだやつだって悪かないし、藤だけやたら推すのはやめろよぉ」
「お前のそれは完全に上級者向けだろ。三代着て味が出るって結城袖を勧めるんじゃねぇぞ」
「主、よろしければこちらの腕輪などいかがでしょう。貴方の手首に合わせて石を小さくしてあります」
「おい蜻蛉切!お前反物に詳しくねぇからって小物で釣ろうとするんじゃない!」
「小物は盲点だったよなぁ…。馬鹿正直に反物しか用意しなかったからさ」
「ねむい」
「それでは縁側に行きましょうか。今日も日差しが柔らかく、風も気持ち良いですよ」
「んー」














































prev next
Back to main nobel