平和に行きましょう。
鏡から
頭から爪先まですっぽりと服や覆面で覆い隠したその小さな人影が、筋骨隆々な男の背後から現れた。こちら側で例えるなら、リドルやリリアよりも尚小柄で、ゆったりとした歩き方や所作の一つ一つからして明らかに貴人の類だろう。
鏡の間から、男と覆面の後に続いて更に5名の男達が現れた。あまりにも服装にも体格にも統一性のない不可思議な団体で、しかし男たちは皆一様に覆面を守るように立っていた。ある者は寄り添うように、ある者はやや斜め背後に、ある者は真後ろに。
「この地に異世界より来た、という少女がいるはず。その者を保護しに参った。早急に引き渡して頂きたい」
「その娘は己の職務を放棄し、本来国を救うべくして降ろした神々を享楽を貪る為に扱った。本来その時点で処分を受けて然るべき所を逃走し、過去や現在に繋がる門を悪用したのです。その結果が、この世界への侵入となった」
などと、丁寧に説明した所で相手は半分ほども理解していないようだった。そりゃそうだ、急に現れた子どもに「私達は神様と一緒に戦争してるよ!監督生って名乗ってる女の子は戦犯だから、こっちで裁く為に渡してね!」と言われたら、普通に頭がおかしい思うだろう。そして沙はもう現時点でかなり面倒臭くなったし、学園長とやらの隣にいることの元凶たる戦犯を引き摺り回して上司に受け渡したくなったので審神者の証明だとかそこら辺を見せてやる気もなかった。
「……という訳で、そこの者を我々に引き渡して下さいますね」
下手にそいつを庇うと、そいつが元の世界で散々やらかした悪縁を辿って虐げられてきた刀剣男士達が近い内祟り殺しにくるので、ついでとばかりに祟られて死ぬより酷い目に遭うこと請け負いである。政府としても、そんなロクデナシでも死なれるよりは生きて霊力タンクとして利用したいので、沙に回収を命じたのだ。ここら辺は大人の事情と沙の弾んでもらう予定のお小遣いにより秘匿される情報だが。
「下らない。お前のそのカンストした性欲なんてどうでもいいから早く帰るぞ。別にこの世界に骨を埋めたいなら好きにすればいいが、その骨を埋めるタイミングは来週辺りになるし、多分魂だけお前が痛ぶって遊んだ刀剣男士たちの神域に囚われて消滅も出来ずに永遠に苦しむ羽目になるぞ」
「っ何よ、何よ何よ、まさかあいつらまだ刀解されてないの……!?」
「全員術殺したよ。すごいよね、何したらあんなに恨まれるの?ってくらい怨念の塊になっちゃってさ。……あぁ、今ならまだ政府が君を秘匿して物扱いする代わりに人として死なせて輪廻転生出来るってさ。断ったら、永遠にアイツらの玩具。誰も救いに来てくれないよ」
「あぁっははははははははは!!!!!ねぇ!ねぇねぇねぇ!!!今もしかしてさ、私の蜻蛉切の霊力塗り替えようとした?馬鹿だねぇあははははは!!!!塗り替えられるわけ無いじゃん!!!私の霊力が、お前ごときの無いのと同じようなミソッカス霊力と同じかそれ以下の訳がねぇだろ!!!」
「主、言葉遣いは姫君のように」
「はぁい」
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