平和に行きましょう。
変じゃない
「なあなあ、やっぱり変じゃない?」
「…大丈夫、あなたの服は歌仙さんが見繕ったんだよ」
「うん。小夜と色違いのお揃いになったもんな」
現代に合わせて歌仙が用意した洋服は、いわゆるペアルックだ。継ぎ接ぎのように様々な布が使われた、非常にゆったりとして裾の長いダボシャツ。小夜が青いボーダー柄で、赤いチェック柄が沙用になった。ズボンは2人ともぴったりとしたジーンズに大きめのスニーカーと、全体的にやや野暮ったさが目立つコーディネートである。しかし元の素材が良い細身で似た顔付きの2人にかかれば、可愛い姉弟の仲良しコーデとして認識されるだろう。それに体型が誤魔化す大きめの服を着ていれば、小夜の本体を隠すことも容易い。沙もシャツの下にはいくつかの秘密道具を身に付けている。
「うう、緊張するなぁ」
「どうして?」
「田舎暮らしだし、こんな都会あんまり来たことないから」
沙の言葉に無理もない、と小夜は繋いだ手に再度しっかり力を篭める。元々幼い頃から審神者として本丸にいた上、否応なしに閉鎖空間となった本丸で霧散されない高密度の霊力の影響で体の成長が止まっている。万事屋がある専用の街に出ても混む程ではない、きっと目の前の雑踏は目まぐるしいものがあるのだろう。
「早く用事終わらせて、家に帰って光忠のご飯食べような」
「…そうだね。飢餓は避けないと」
その場にいたのは、猫のような目付きがよく似た幼い姉弟だった。姉は赤、弟は青色の同じシャツを着ていて、ぴったりと寄り添う様子はかなり仲が良さそうに見える。どちらも小学生低学年程度の小柄な子どもで、青褪めて震えている少女の精神的にどう考えても事件への関与は認められない。逆に少年は姉を気遣う程に冷静で状況の理解していて、見た目にそぐわずやけに大人びている。だが、流石に7歳の子どもが大人二人相手に、的確に人体の急所を深く抉る事は不可能だろう。今回の殺人事件は、軍隊での訓練を受けて近接戦闘に特化した人間が行うような手際なのだから。
「ねえねえ、君たちもあそこにいたんだよね?」
「…だから何。お前誰なの?」
「ボクは江戸川コナン。おじさんが探偵だから、今それのお手伝いで話を聞いてるんだ。だから、お姉ちゃん達がもし何か知ってたら、教えて欲しいな」
「……むり、おもいだしたくない。人が死んだの見て、ものすごくきもちわるい」
「悪いけど、今から刑事さん達が家まで送ってくれるから、話す時間もない。今にも吐きそうな姉さんに関わらないで」
「備後国が沙良隊。内閣府極秘局通称“時の政府”直轄の抱える征伐執行部隊で、幼少期より戦果を上げ続ける古参の問題児。部下へのパワハラ、暴言、虐待、放置プレイなどあからさまなブラック行為を堂々と行いながら、何故かそれでも謀反どころか嫌悪もされない謎の求心力と空前絶後の人外限定カリスマ性を最大限に悪用する生粋の悪童!仕事仲間である他の人間からドン引きか嫌悪されて、内部告発の回数が先日三桁達成という不名誉極まりない偉業を達成したこともある。それでも彼女の隊が解体どころか厳重注意も減給もされないのは、単に一日辺りに挙げる戦果が平均的な報告よりも三倍が普通、つまり他人の三倍以上働くのが当たり前。後退を許されない現状において効率化の面で許されているに尽きる」
「道具として、だけど」
沙はあっけらかんと言い放った。その言葉に重みはなく、ただの事実を事実として伝えただけの軽さだ。
「当たり前でしょ?刀だよ?今戦争で、こいつらを指揮して人間の代わりに戦ってもらうことで今成り立ってる。だから大好きだよ、大切にするよ、言葉も惜しまないし要求があるなら聞く。でも、こいつらは人間じゃない。道具に人間と同じ愛情を抱くのは対物性愛者だ」
「手足が千切れても、腹を切り裂かれても、手入れで無傷になる存在は人間じゃない。人間じゃないけど意思があるなら尊重するし話もする。私は好き勝手にしてるし奴らも好きにする。それだけの話をここまでややこしくして何がしたいの?ただお前達のルールにそぐわないってだけで?なら勝手にチマチマやってろ」
─虐待について
「んんん…んー…それって」
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