「ねえ、今日なんの日か知ってる?」
唐突な私の質問にキバナくんはサッと顔色を青くした。その辺を飛んでいたスマホロトムを引っつかむと必死でスケジュール帳を見始め、軽い気持ちで言った私まで焦ってしまう。
「違うの! 記念日とかじゃなくって! ほら、これ!」
慌てて背中に隠していた箱をキバナくんに見せると目に見えてほっとしたような顔をする。
「あー、そういえばポッキーの日だったか」
そう、今日は十一月十一日。コンビニからスーパーまで大量のポッキーが並ぶ日である。私もそんな経営戦略にコロッと騙されて、帰り道のコンビニでポッキーを買ってきてしまったのだ。
最近キバナくんが忙しくてなかなかイチャイチャ出来なかったからきっかけになるかなと下心丸出しで買ってきた訳だが、キバナくんの様子を見る限り大失敗だ。変なことで気を遣わせてしまった。
「コンビニでたまたま見かけてさ! たまには食べたくなってね!」
誤魔化すように言葉を重ねるが、その意図はしっかり伝わってしまったようで少し考え込むような仕草を見せた後にキバナくんは苦々しく言った。
「……悪い、今減量中なんだ」
なんて私は間が悪いんだ。羞恥心で顔が熱くなる。きっと優しいキバナくんは私に恥をかかせるまいと付き合ってくれようとしたのだ。いやもう本当にこんな馬鹿なことに付き合わなくて正解だよ。
自己嫌悪でグルグルする私を見たキバナくんは手招きしてきた。
「ちょっとこっち座って」
「い、いいよ。本当に自分で食べるために買ってきただけだから気を遣わないで」
「いいから、いいから」
遠慮して逃げようとする私を迎えに来たキバナくんは手を取り、ソファまで引っ張っていった。何ともいたたまれない気分になりながらキバナくんの隣に座ろうとすると、違うと地べたに座らされる。
なんだろうと頭の上にハテナを並べているとキバナくんはゴソゴソとし始めて、とんでもないモノを目の前に出される。
「え、あ、……キバナ、くん?」
すでに熱くなっていた体温がさらに上がり、訳の分からないこの状況と合わさって頭の中が沸騰してしまいそうだ。キバナくんはそんな私を見てにっこり微笑んだ。
「オレさまの肌がチョコレートみたいで美味しそうって前に言ってただろ♡ ポッキーゲームは付き合ってやれねえけど、食べてるとこは見ててやるよ♡」
いや、ポッキーでもなんでもないんですけど!?
どこでスイッチが入ったのか色気がダダ漏れなキバナくんから目が離せない。手入れされてすべすべの肌は舐めたらチョコレートのように甘いのだろうか。
「上手に食べれたらご褒美やるから頑張れ♡」
その後を期待させるような言葉に私はごくりと唾を飲み込んだ。