かわいいこ

「キバナく〜ん?また私のプリン食べたな?」
二人がけのソファに横向きに寝っ転がり長いおみ足をはみ出させるキバナくんに向かって私は仁王立ちでせまる。私が今日も一日仕事を頑張ったご褒美にと買っておいたプリンは短時間の間に忽然と姿を消していた。帰宅して冷蔵庫に入れてお風呂に入って上がって髪を乾かしてのわずか一時間ほどで、である。今この家にいるのは私とキバナくんだけ。まさかプリンに足が生えて逃げ出すわけがないのでキバナくんが犯人で確定だ。逃げられないぞとしかめっ面でキバナくんをにらむが、まるで効いた様子はなくヘラッと笑った。
「オレさまの分かなって」
俗に言うヌメラスマイルはキバナの顔面の良さと相まって可愛さ一万点だ。しかしながらこれが初犯ではないので大幅減点させてもらう。あざとい仕草で誤魔化そうとしているが、明らかに自分の分ではないと知っていて食べている。許すまじ。
「あれは私が今日一日頑張って偉い!めちゃくちゃ疲れたよね!甘いものでも食べてストレス吹き飛ばしちゃえ!の大事な大事なプリンだったの。お分かり?」
「そっか。そりゃあ、悪いことしたな」
素直に非を認めるところは好感度回復だ。明日はキバナくんにプリン買ってきてもらおう。ケーキ屋さんのお高いやつ。
分かればいいのよと許しの言葉をかけようとするが、それより前にキバナくんは私に向かって腕を伸ばした。
「ん、」
「なに?」
「オマエの癒しを奪っちゃったからオレさまが責任をとって甘やかしてやろうと思って♡」
お仕事用の色気たっぷりの不敵な笑みは控えめに言って最高。えちちポイント百万点である。カンスト越えおめでとう!殿堂入りだよ!と、いけないいけない。あまりのカッコ良さに流されるところだった。自分の良さを知り尽くしたキバナは自分の見せ方というものをよく分かっていて毎日顔を合わせる私でさえ丸め込まれそうになる。
「明日ちゃんとプリン買ってきてくれないと許さないからね!」
「あー、騙されなかったか」
残念そうな口振りでそうは言うけれど、ちゃっかりハグはしてもらう私にニマニマと緩む頬は隠せていない。上機嫌なキバナくんは明日も何かにつけてきっとプリンを買ってこないのだろう。全く素直じゃない。
「ねえ、キバナって甘いもの苦手だよね?」
「………そうでもないぜ?」
目が少し泳いだのを私は見逃さなかった。焦ったようにたまには甘いものもたまにはいいと嘯くのを聞きながら、私はキバナくんの胸にぐりぐりと額を押し付けた。
私に構われたくてわざとプリンを食べちゃうの本当は知ってるんだからね?
優しさで飲み込んだ言葉を知らないキバナくんは許してもらおうと私のご機嫌をとる振りをしてあれこれ世話を焼いてくる。仕方のないヤツめと思いながらワガママな素振りを見せる私は本当によくできた彼女だ。
ああ、まったく、可愛くなくって可愛いんだから。