ダンデがここに閉じ込められて今日で何日経っただろうか。オドオドと落ち着かないような素振りで家へ泊まりに来ないかと彼女に言われ、誘いに乗ると夕飯にはしっかりと睡眠薬が盛られていた。ダンデは立場場こういうものを飲まされやすく普段から薬が効きづらいようにトレーニングされてきた。この程度だったら気分が悪くなったと言って帰宅することも可能だがダンデはしなかった。純粋に彼女がどうするのか気になったのだ。
祈るようにダンデを見つめる彼女の期待通りに眠そうな仕草を見せると早く休んだ方がいいと寝室に案内される。ダンデは紳士として背中を押す彼女の表情を覗き見ることはしなかったがきっと暗い笑みだったんだろう。次に目を覚ますとしっかりと枷が嵌っていた。
「おはよう」
何事もなかったかのようにニコニコ微笑みかけてくる彼女はダンデに敵意はない。ただ囲いたかっただけなのだと理解して挨拶を返す。この状況に何も疑問を持たないダンデに彼女は眉をぴくりと動かしたが特に何も言うことなく世話をやき始めた。枷のせいで不自由なところは彼女の手をかりつつ身支度を整える。とは言っても仕事着ではなく私服である。しばらく仕事は休みだなと思い、彼女にダンデのスマホはどこだと問いかける。
「それはダメ。助けを呼ばれると困るし」
「だが連絡を入れないと捜索願いを出されるぜ?迷子に関してオレは信用がないからな」
大事になったら困ると主張するダンデと、連絡手段を与えては逃げられてしまうと危惧する彼女の話し合いは平行線をたどった。いつまでも無意味に争っていても仕方がない。ダンデは実力行使に出ることにした。
「この枷を引きちぎって探してもいいんだが?」
「………まさか」
脅すように枷に手をかけると彼女はようやくダンデがそれをできると踏んで言っているのだと理解したようでスマホを持ってきた。開くとメッセージの通知がいくつか入っていたが、それは無視して秘書へと連絡をかける。しばらく休むと告げると有能な秘書はすぐに不在時の対応について話し出す。いくつか指示をしてこれでしばらくは持つだろうと算段をつけたところでそういえば期間を伝えていなかったなと気づく。
「どのくらい監禁するつもりなんだ?」
そう問いかけると彼女は肩を大きく揺らして黙り込んでしまった。どうやら考えていないらしい。仕方がないので秘書には適当に一ヶ月ほどと伝えて電話を切った。
それから彼女は事ある毎に自分がダンデを監禁しているのだと言動で示すようになった。その気になればいつでも逃げ出せるというのに可愛らしい虚勢だ。ダンデが大人しく従うとほっとしたような様子を見せてしまう彼女はこういったことに向いていない。内心ではきっと罪悪感が募っているのだろう。
「なあ、キミは何でこんなことをしたんだ?」
監禁され始めてから一週間ほど経ち、退屈してきたダンデは気まぐれに聞いてみた。その質問に対する答えを一週間前から用意していたであろう彼女は視線を逸らした。
「………ダンデくんに私だけを見て欲しくて」
「へえ」
確かに恋人と呼ぶには逢瀬も連絡も少なかったかもしれない。彼女が気にした素振りを見せなかったものだから全く気がついていなかった。それが一足飛びで監禁するとは彼女は不思議な人だ。
「上手くいって良かったな」
ダンデの言葉に彼女は苦虫を噛み潰したような顔をする。それもそうだろう。彼女が自力で遂行するのは不可能だった。
あくまでダンデ自身の意思で彼女を勝者にしてやったのだと分かるようにゆったりと微笑みかける。お情けで与えられた勝ちなんてさぞ屈辱に違いない。思惑通りの反応を見せる彼女はとても愚かで愛おしい。その反抗心ははたしていつまで持つだろうか。ダンデが飽きて出ていってしまえば彼女の願いはあっという間に崩れ去る。そんな恐怖と戦いながら強気でいるのは難しい。やがてダンデの足元に縋りつき、傍にいてと乞うことになるだろう。考えただけで胸が高鳴る。そしてダンデはそんな彼女に優しく
可哀想と声をかけるのだ。
憐れみから手を取られる気持ちはどんなだろう?きっと良い気分ではないに違いないがそれでも彼女は手を取るしかない。自身の惨めさに悲しみや怒りを感じながらダンデを愛するのだ。さすがにそれは可哀想すぎるか。そうだな、もし彼女がダンデのところまで落ちてきたら教えてあげてもいいかもしれない。
オレもキミを監禁したかった、と