迷子

…迷子になりました。






事の発端はルッスさんの「みゆちゃんの服を買いに行きましょう!」という発言。
どうやら、小さい女の子は珍しく、着飾らせたいようだ。

部屋のコーディネートから察するに、フリフリのピンクのお姫様ファッションになるんだろうなあ…。
いや、それは女の子なら誰しもが思い描く素敵な服装ですけどね。草原で大きな犬と戯れるヒラヒラフリフリの服の少女。それを見守る兄並びに淡い恋をしている王子様…。はふう、素敵…。


じゃなくて。
だから、お仕事(どんな仕事なのかは怖くて聞けない)がお休みのルッスさんとスクアーロさんで買い物に来たんだけど…。

…。
ここ、どこだろう…。

高級感溢れる内装にタジタジです。

あ、この服かわいい。値札を確認。チラリ。




ほわあああああああ!ななななんだこの金額!子供服の値段じゃない!いや、素敵な肌触りですけど!


なんて一人で大騒ぎしてから、ため息をついた。むなしい。二人ともどこに行っちゃったんだろう…。



……私、迷子になりすぎだよね。自分の方向感覚を疑います。


…こういう時って、動いちゃ駄目…なんだよね?
まあ二人も捜してくれるだろう(と信じてる)し、座って待ってればいいか。


…。
ベンチに座っている私の前を通り過ぎるのは、赤ん坊を連れた女の人や、目元の優しいおじいさんなど様々だが、みんな品の良い高級感を漂わせている。

今までのわたしなら、こんなデパートには来ていないだろう。

……おかあさん…。

ちょっとだけ泣きそうになって、ベンチの上で体育座りをして、膝に額を押し付けた。


もしかしたら、もう会えないかもしれない。こんな姿を見て尚、ふつうに接してくれるはずがない。
なんて、センチメンタルな気分になっていたら、頭をぽんぽんと撫でられた。おおきな手。


スクアーロさんかな、と顔を上げて驚愕した。



「やほ」
気さくに挨拶をしてくる男の人。



だ、誰ですか…。

私の思いが伝わったのか、目の前の人がにこりと笑った。


「僕は白蘭だよ。初めまして」
語尾に音符がつきそうなほど、上機嫌な声。

白い髪に白い服の男の人。その目は、楽しそうに三日月を描いていた。