怖いものが嫌いな大人

フラン視点



やばいやばいやばい、やばいですー。

コントローラーを握る手に汗がにじむ。視線はテレビ画面に釘付け。
テレビ画面では、自分が操作するキャラクターがチェーンソーによってちょっとお見せできない状況に陥っている。

「ちょ…!ちょ、待…!あああ、腕がもげっ…痛い痛い!酷い!」
…グロ系ホラーゲームなんてやらなければよかった。

いや、グロは大丈夫なんですけどねー。
震える指でゲーム機の電源を切った。

…よし、寝よう。寝る。
もそもそとベッドの中にもぐった。
……。ぐるりと辺りを見回す。壁にかけたコートが人影に見えて、一瞬ビクッとした。

2時15分。
……。

寝れない…。


このままじゃ駄目だな、と思って立ち上がった。談話室にでも行きますかー。





電気をつけて、ソファに座った。
…あ?
……ディスク持ってきちゃいましたー。

あーなんか…自分の部屋じゃないってだけで落ち着きますー。
いや、ビビってるわけじゃないんですけどねー。

眠たく……なって…






息苦しくて薄目を開いた。目の前に居るのはしじみ。
鼻をつまんでいるらしい。くそがきめ。


ようやく手を離したかと思えば、ミーが寝ているソファに頭を乗せた。
そのままこちらを見てくるので、仕返しの意味をこめて、しじみの鼻をつまんだ。

「なぁに見てるんですかー」
「んぶっ」
「ったく、油断も隙もないですー」
「ん゙ーっ!」
必死にミーの手を鼻からはずそうとするしじみがとても面白い。
思わず鼻で笑ってしまいましたー。
それから手を離すと、しじみは慌てて鼻をさすった。痛そうな顔をしているが、どこか満足げである。

それをじっと見ていたら、視線に気づいたらしいしじみがこちらを見た。


「なに」
「寝ないんですかー?」
「おひるねしたからねむくない」
「ばかですかー」
ソファに座って、しじみと話をする。

「おへやでねないと」
「は?」
「かぜひくよ」
はあ…。こいつばかですかー。

「ミーの隣の部屋、スクアーロ隊長なんですよねー。あの人いびきがうるさくってうるさくってたまりませんー」
そう言ったら、しじみがなるほど、という顔をした。

「嘘ですけどー」
え!?と驚いてミーを見るしじみ。
隊長カワイソー。

「なら、どうして?」
「…特に理由なんてありませんー」
持ってきてしまったゲームをこっそり隠そうとした。

「なにこれ」
「!!?」
気づきやがった!

「あっ、ちょ、」
慌てて奪い返そうとしたが、交わされてしまう。ヴァリアー霧の幹部をかわすとは…。

「ふらん」
「…なんですかー」
呼び捨てかよ。

「こわくてねれなかったんだ」
「…そんなわけないじゃないですかー」
「こわいんだ」
「…」
くそ、コイツ。
どうせお前も苦手なくせに。ていうか得意なわけがないじゃないですか!断言できますー。

「しじみ」
「みゆ」
あー、そういえばそんな名前でしたねー。

「…みゆ」
素直に呼んでみたら、ちょっと嬉しそうな顔をした。

「ミーの部屋に行きますよー」
「どうして」
「このゲームやりますー」
仕返しですー。せいぜいビビれ。

「…いいの?」
「なにがですかー」
「わたしこわいのすき」
「…」
思わずしじ…みゆを睨みつけた。
こういうのが怖くない子供なんて居るわけがない!
にらみつけてもケロッとしているみゆ…。え?マジで?マジで好きなの?

「ミーは別に怖いのが嫌いなわけじゃないですー。ミーは自分の睡眠管理もできないみゆが可哀想になったから好意で一緒に居てやろうかとしてるだけでー、別にゲームが怖くて眠れないからだとかそういうんじゃないですからー」
なんだか悔しかったので強がってべらべら喋ったら、みゆが笑った。

「しかたない。かわいそうだから、いっしょにいてもらう」
「…そうした方がいいですー」
一本どころか十本くらいとられた気分だ。