「…」
「…」
「どうしたの?二人とも。ボーッとしてるわよ?」
うう…。つらい。
フランさんをじとりと見たけど、フランさんはフォークを持ったままうつらうつらしていて、こちらを見ていない。
あ゙ー。頭がボーッとする。
ルッスさんの作った朝ごはんはとても美味しい!
美味しいんだけど……。
「お前らなんで揃って寝不足なワケ?」
「…それは、昨日の深夜のことでした。ミーは、談話室で仮眠をとっていました。…ふと、頭が覚醒したとき、ミーのそばに気配があることに気づきました。ヒヤリとした風邪が、頬を撫でる。……なにかが、いる。そう思った途端、ミーは体が動かなくなるのを感じました。ミーは、ただ恐怖に震えていました。目を開けてはいけない。それを本能で感じ取ったミーは、頑なに目を閉じていました。そのなにかが居なくなるのを、待っていたのです。…しばらくして、ミーはゆっくりと目をあけました。もう、危機は去ったと思ったからです。ところが、目をあけた途端、ミーは自分の行動をひどく後悔しました。……それは、ずっとミーの前に佇んでいたのです。ミーと目が合うと、それはニタリと笑いました。そいつは、楽しそうな顔で、ミーの耳元に…「お前な゙あああああああああああああああああ!!!」
ビクゥッと体が跳ねた。
ベルフェゴールさんが椅子から落ちた。
「まあ、そいつってみゆのことなんですけどねー」
「なんだあのガキ…ん?」
「お前、しじみだとかクソガキだとか言ってたのに名前で呼ぶようになったワケ?」
「いやー、昨日の夜から今朝にかけて友情を深めましたんでー」
なにが友情を深めた、だ。
一緒にグロ系ホラーゲームやっただけでしょ。
「ふらんさん、ずっとこわがってた」
「は?そっちのほうが、…あー…」
言葉をつまらせたあと、恨みがましくこちらを見るフランさんに、ニヤリと笑った。
「…せんぱーい、聞いてくださいよー。こいつ、ホラーゲーム大丈夫らしいですよー」
「お前は苦手なの?」
「…」
「まじかお前、この世界向いてねーよ」
「幽霊とか実体がないから殺せないじゃないですかー」
「だから向こうもこっちに危害加えられねえだろ」
「ハッ…」
センパイ天才ですかー、と言うフランさんに、ベルさんがししっと笑った。
「お前ら、朝までゲームしてたのかぁ?」
「ふらんさんがかえらせてくれなかった」
「お前…ガキだなぁ」
「ガキじゃないですー。眠れないみゆの相手をしてあげてたんですー」
まあ、そういうことにしといてあげなくもないけど。
「さあ、いいからご飯食べちゃいなさいよ!」
「はーい」
なんだか、さっきよりも頭が冴えた気がする。
「るっすさん」
ごちそうさまをしたあと、台所にお皿を持っていく。フランさんとベルさんのぶんも押し付けられちゃった…。
「ありがとう」
ルッスさんが頭を撫でてくれた。
「るっすさん」
「なあに?」
「どうしてこんなにおおきなおやしきにすんでるのに、めいどさんたちいないの?」
「…」
な、なんだその遠い目は。
「あー…ボスが…ああ…なんというか…その…ねえ…」
「?」
ボスって多分ザンザスさんだよね…?
「ざんざがなにかしたの」
「…まあ、いろいろ…」
嫌がらせとかかな?
アーラそこのメイド、窓にまだ埃が残っているワ、みたいな…。
……それはないか。
「まあね、大人の事情があってね、メイドさんは雇えないのよ。というか、雇わないようにしてるの」
「おとなのじじょう…」
出た、大人がつかう便利な言葉だ。
気になる。けど子供に言えない内容なのか…。
……どんな陰湿ないじめしたんですか、ザンザスさん…。
知りたいような知りたくないような。
「でも、みんなるっすさんがいるから、あんしんだね」
「…!きゃーん、もうカワイイ!!!!!みゆちゃん、素直なままで居てね!」
ぎゅううううっと抱きしめられて、頬ずりされた。ちょっとチクチクするけどそれはきっと気のせいだ!!そうだと信じたい!
「ねえ、みゆちゃん今日は予定ないかしら?」
「うん」
「今日は、お昼はみんないないから一緒にお茶しに行きましょう!」
「やったー!」
カフェとか行っちゃうのかな!
…でも、おしゃれなお店って…子供ってダメなんじゃないかなぁ…。
……ハッ!そういえば!
なんだか落ち着くからこの状況に甘えてるけど、これって大分不思議な状況だよね、わたし。
だって、小さくなってるし……、うん、もう全面的にここからおかしいよね。
なんだよ小さくなるって。
あとは、いきなり外国に居たこと。
……言葉が、通じること。
最初はみんなが日本語使えるのかな?とか思ってたけど、どうやらわたしがイタリア語を喋っているらしい。
…んん…なぞだなぁ。
……どこかで聞いたことあるぞ、異次元?だっけ?
まさかのまさか、わたし…違う世界にいるなんてこと……
…
…。
あ、あるわけないよねー!
でも、お母さんにはちょっと会いたい…なあ。