ガキ×ガキ

フラン視点

「うぉおお゙おぉ゙い!誘拐じゃねぇかぁ!」
スクアーロ先輩が吼える。その声も気にならないくらい、ミーは動揺していた。

「……マジで言ってるんですかー?」
「ボスったら…大胆…」
オカマ先輩の言葉に顔をしかめた。

おかしい。どうして、あんなに警戒心の強いボスが、…。
まさか、変な術でも使ったんでしょうかー…

いや、でも……ボスがそんな術にひっかかるとは思えませんしー。

そう思っていると、先輩がふとミーの隣から居なくなった。

あれ、と思っていると、先輩は、女の前に座って手を差し出していた。

ミーは、ガラにも無く――すでに動揺しているのだが――動揺した。
先輩、まさか。
そんな女に、

どんどんとミーの周りが崩れていく。
変な術を使っているに違いない。

――せんぱ、い。

どくどくと音を鳴らす心臓をできるかぎり抑えて、先輩に近寄った。


「せんぱーい、さっきまで警戒してたくせに何やってんですかー?」
いつもどおりに、を意識して話しかける。

「あ?うっせーな、ほっとけ」
つん、と先輩は顔を背けた。
あ、いつもの先輩だ。

「…あら、ベルちゃんって小さい子好きだものねぇ?この前も公園で遊んでたでしょ?」


え。


オカマ先輩の言葉に固まる。
え、まさか。

「ばっ、おま、見て!?」
先輩の焦りように、本当のことなんだと知る。
……なんだ、ただ単に。
ただ単に、小さい子が好きなだけだったんだ。(まあ、それもおもしろいですけどー)

「そうだったんですかー?」
「ええ。結構行ってるみたいよ」
「ー……〜〜!!!!」
先輩がしゃがみこんだ。とてつもなく恥ずかしいらしい。

「あれ?じゃあ、何で最初は警戒したんですか?」
ミーが聞くと、先輩は無視を決め込んだ。
ミーも傷ついちゃいますよー。


「ベルちゃんってば恥ずかしがり屋さんだものねぇ!」
「ば、オカマまじ黙れよ!」
「ははーん」
にやあ、と口端が上がるのが自分で分かった。
多分ミーは今すごい悪い顔をしてるんでしょーねー。

「ミーたちにバレたくなかったんですねー?」
にやにや。
口のにやつきを抑えることもせずに、ミーは先輩の前にしゃがんだ。
そして、そのまま顔を覗き込もうとするが、先輩に逃げられてしまった。ざんねーん

「まあ、いきなり見たこと無い奴がボスの後ろに居たら警戒はするだろうがなぁ」
「あら、ボスが連れて来たのよ?悪い子じゃないわよ」
オカマ先輩が、うふふふと笑って女の子の頭を撫でた。
…あれ、名前なんでしたっけー?


「お゙ぉおおおお゙い!ボスさんよぉ、血まみれじゃねぇかぁ!」
急に大声がして、ベル先輩がびくりと肩を震わせた。
だっせーのー。

先輩をからかったら、ナイフ投げられた。ゲロゲロゲー。

そんなことをしていたら、アルコールのきつい匂いがした。
またですかー。


「いいからさっさと風呂入れぇ!」
大きな声が耳をつんざく。

おおう、元気ですねー。
てかお前も風呂入れー、ゲロゲロー。



「……まあ、いいですけどねー」
先輩がロリコンだろうとなんだろうと。
うわ、でも揺するネタになりそ……ならないか。

「…えーと、名前なんて言いましたっけー?しじみでしたっけー?」
おどけながら、少女の顔を覗き込む。
しじみみたいにちっこいからしじみだ。
異議は認めませんー。

「みゆです」
お、ナマイキな顔。

「……しじみですか」
「みゆです」
「よろしくお願いしますねー、しじみさんー」
「みゆです」
「……ゲロ」
しつけーな。
これは負けられませんー。

「しじみさん」
「みゆです」
「しじみさん」
「……………かえるさん」
「ゲロゲロ!?ナマイキですねー」
かえるだなんて、このくそガキ。

「ゔぅ」
「変な顔ー」
ほっぺたをつまんでやったら、変な顔になった。
おお、流石子供。やわらかい。

おー。伸びます伸びますー。と思っていたら、温かい手がミーのほっぺたをつまんだ。

「ゲロッ」
こ、こいつ。


ぐにぐにーん。
むにむにーん。

「……しじみ」
「……かえる」
「…」
「…」

にらみ合っていると、先輩が溜め息を吐いた。





…どうやら、ミーはこいつと仲良くできそうにありませんねー。