ベルフェゴール視点
カマ走りで去っていった(流石っつーかなんつーか、早ぇよなあ)アイツのせいで、変な雰囲気が訪れた。
ガキはガキで、居心地が悪そうにちらちらとこちらを見ている。
「連れてきちゃったもんは仕方ないですー。全っ然気に食いませんけどー」
フランが、溜め息まじりに言った。
んだよ、結局納得してないんじゃん。
……まあ、ボスが気を変えることはねーだろーけど。
「お前ガキかよ」
うし、と笑ってやったら、フランに睨まれた。
「黙れ堕王子」
「てめぇ殺すぞ」
だあれが堕王子だっつーの。
マジで攻撃するほどじゃあなかったけど、なんとなくガキを怖がらせてみようとして、ナイフを出してみた。
……。
フランも、ガキを見る。
……。
目を細めた。へえ、コイツ。全然ビビッてねーじゃん。
「ゔぉ?なにしてやがんだぁ?」
スクアーロが風呂から帰ってきた。
目に見えて安心したガキに、にやりと笑った。
「別になんもしてねーよ」
「なにもしてませんよー。ただ堕王子がチョッカイかけてきただけでー」
こいつは一言どころか二言三言多いんだよ!
イラッとしたから、チクッと(本当にチクッと。)してやろうと思ったら、スクアーロがうぉ゙おお゙い!と怒鳴った。
「てめぇらなぁ、こいつがびびってんだろぉ」
ガキの背中を優しく叩いて、……。
……。
…………きもっ。
目の前のカエルもそう思ったに違いない、フランの表情も酷いものだが、カエルもうんざりしているように見えた。
なんだよ、コイツ。でれでれして。
(覚えてねーし、俺の親はどうせそんなんじゃねーけど)父親みたいだ。
「け、けんかよくない!」
「…」
両手で握りこぶしを作って俺たちを見上げるガキに、何を言えばいいのかわからなかった。
綺麗な瞳が、ふたつ。こちらをまっすぐに見つめている。
自分の全てを見透かされているような気分になって、ガキから目を離した。
「…いいんですかねぇ」
フランが、いつもとどこか調子の違う声で言った。
「……いいんじゃね?」
うしし、と笑いながらフランに答える。
フランは、一瞬俺を見て、それから溜め息を吐いた。
「……まあ、いいんでしょうねぇ」
ガキを見ながら、うんうん、と頷いたフランに、ガキが頬を膨らませて、なにが、と問いかけた。
「……ま、いずれ分かるって!」
フランに答える気がないのは分かっていたので、そう言ってガキの頭をかき回した。
…これで、誤魔化せるといいけどな。
「…ずいぶん楽観的ですねー。まあ、ミーがこんなくそガキにどーこーされるわけないですけどー」
「お前もじゅーぶんガキだよ」
うしし。
スクアーロが、お前もガキだよ、みたいな目でこちらを見る。
こいつらに比べたら、俺のがオトナだし。
なんて思っていたら、フランが立ち上がった。
「あ?お前どこいくわけ?」
「独占したいくらいミーが魅力的なのは分かりますがー、ちょっとやめてもらっていいですかねー。ストーカー死ね」
「てんめぇ……」
「うわーセンパイが怒ってるー。こわーい」
きゃー、と棒読みで悲鳴を上げて、フランは部屋から出て行った。
うっぜええええええええええええ!
イライラしている俺に気付いたのか、スクアーロが溜め息を吐いた。
「ベル、いい加減大人になれぇ」
「オトナだし」
「そんなんだからお前はいつまでたってもぺーぺーなんだよ」
先輩ヅラするスクアーロに腹がたって、ベッと舌を出した。
「ウルセー、アホのロン毛たいちょーのくせに」
「てめえええええ!それをもう一度言ってみろ、腹かっぴらくぞ!」
「ぺーぺーの言うことマトモにすんなし」
揚げ足をとって、にやりと笑った。
雄たけびを上げて突っかかってくるスクアーロをかわしていたら、でっけー音をたててドアが開いた。
出てきたのは、獣。
!
そこで、あることに気付いて、スクアーロを見た。
スクアーロは、静かに首を左右に振った。
ま、じ、か、…。
「肉」
地を這うような声で言い放って、獣――…ボスは、こちらを向いた。
「…やべ、」
「うぉ…」
部屋に、重い沈黙が舞い降りた。