大荒れ注意報

がたがた震える窓。
電気をつけるのも戸惑うほどの、威圧感。
薄暗い部屋で、赤い瞳がぎらりと光っている。



……わたしは、そんな空気の中で、流れについていけずに立っていた。

隣のスクアーロさんとベルフェゴールさんは、顔を引きつらせたまま固まっている。


目の前ですごい威圧感を放っているザンザスさんは、もう一度地を這うような声で言った。


「肉」


お肉が欲しいようだ。

だったらあげればいいんじゃないかな、と思いながら二人を見上げる。



その視線に気付いたのか否か、スクアーロさんが頭をがしがしと掻いて、口を開いた。

「ボスさんよぉ、」
「肉」
「だああ!話を聞けぇ!」
「……なんだ」
ザンザスさんが、ぎらりとスクアーロさんを睨む。

こ、こわい。


「…肉……がなぁ、…あー……」
「さっさと言え、カス」
「……ねぇんだよ」

ゴオオ、と風が吹いている。雨が降り出したらしい。
ビシビシと窓ガラスに雨が当たる音が聞こえてくる。


「ねぇ、…だと?」
ザンザスさんが、ゆっくりと顔を上げた。

雷が光って、雨の音が強くなる。
ベルフェゴールさんも、スクアーロさんも動かない。



そんな中で、わたしは、口の中がからからなのが気になって仕方が無かった。
実は、前からずっと喉が渇いていると感じてたんだけど…。


そおっと、三人の顔を見る。



…。
い、言えない。


言える雰囲気じゃない……!




ピカッ、とまた雷が光る。
ザンザスさんの赤い瞳と、スクアーロさんの銀髪と、ベルフェゴールさんの金髪がやけに目立つ。

ごくり、と誰かの唾を飲み込む音がした。



「あら?なにしてるの?」

パチッと小さな音をたてて、部屋が一気に明るくなった。
目をしばしばさせてそちらを見ると、ルッスさんが、両手に買い物袋を提げて立っていた。

「!るっすさん…!」
場の雰囲気が一気に解けて、ベルフェゴールさんが安心したように溜め息を吐いた。

「オイ」
ザンザスさんが、ルッスさんの方を向いた。

「肉」
「ああ、もう晩御飯つくり始めるわよ!」
だから待ってて頂戴、とルッスさんが言うと、スクアーロさんも肩の力を抜いた。

……ルッスさん、すごい。


「お前、なんでこんなに遅かったんだぁ?」
スクアーロさんが、ルッスさんに聞いた。

「急に雨が降ってきて!びっくりしたわぁ、降らないって言ってたのに」
「大空が荒れてたからかもしんねーな」
ししし、とベルフェゴールさんが笑った。


ベルフェゴールさんの言っていることはよくわからなかったけれど、窓から見える空は澄み切っていた。