大荒れ警報

スクアーロ視点



がたがたと情けなく震える足。
薄暗い部屋の中で、ザンザスの、赤い瞳がいやに光って見えた。



「肉」

繰り返して言って、ザンザスはこちらを睨みつける。


ガキが、隣で不安そうにしている。(気がする。無表情だからわかんねぇ)


「ボスさんよぉ、」
頭を掻きながら、話しかける。

「肉」
「だああ!話を聞けぇ!」
「……なんだ」

言わなければならない。
一応俺の言葉を聞く気はある様子だが、聞いたからといって、俺の命が助かるとは限らない。
ベルは、まだ固まっている。


「…肉……がなぁ、…あー……」
「さっさと言え、カス」
「……ねぇんだよ」
急に雨が降り出した。窓ガラスに雨粒が当たるたびに音がする。
ザンザスが、顔を上げた。

「ねぇ、…だと?」


俺は、動かなかった。ベルも、指先をぴくりとも動かさない。
こいつ生きてんのかぁ?と少しだけ心配になるが、正直ベルより自分の命のほうが心配だ。


ピカッ、と雷が光った。

なんだあ、まるで空と連動してるみたいだなぁ。
……うわ、嫌な奴を思い出したぜぇ。
ザンザスのことを崇拝している、雷野郎。
あいつ、まさか感情までわかるのかぁ?

なんてふざけてみても、状況は変わらない。

ごくり、と唾を飲み込んだ。




「あら?なにしてるの?」

パチッと小さな音をたてて、部屋が一気に明るくなった。
一瞬目を閉じたが、すぐに復活する。

「!るっすさん…!」
ガキの声がして、ベルが安心したように溜め息を吐いた。

まだ、だ。
ザンザスは、まだ安心できねぇ。

「オイ、肉」
「ああ、もう晩御飯つくり始めるわよ!だから待ってて頂戴」
ようやく安心できて、体の緊張が引いた。


「お前、なんでこんなに遅かったんだぁ?」
「急に雨が降ってきて!びっくりしたわぁ、降らないって言ってたのに」
「大空が荒れてたからかもしんねーな」
ししし、とベルが笑った。
同じことを考えていた身としては、笑えねぇ。


トントン、と包丁の音が聞こえる。
ガキが、手伝いに行ったらしい。

ザンザスも、くるりと踵を返した。


ベルと二人で顔を見合わせて、笑った。