データ紛失
「あ」ブン、と音をたてて消えた画面に声をあげた。カチッとクリックしても動かない。電源落ちとるわ、と実感した途端酷く腹がたった。作業時間がパアだ。何時間費やしたと思っとるんや、三時間やぞ。ふざけんな。腹を立たせたまま電源をつける。英文の羅列が姿を現してから、しばらくしてから見慣れた画面が出てきた。「…あ?」ショートカットやフォルダーがたくさん並んでいたはずの画面が、左端に数個並んだだけでスッキリしている。嘘やろ。慌ててデータフォルダーを開いたが、まっさらだ。最初から入っている壁紙用の画像しかない。「嘘やろ」ショックを受け止めきれずに、パソコンはそのままに部屋を出て、リビングに下りた。冷蔵庫からリンゴジュースを出して、一気に飲む。これが悪い夢だったらいいのに。コップを流し台に置いて、サンダルを引っ掛けて、昼間はまだ暑さの残る外に飛び出した。アスファルトを駆けて、踏切を駆け抜けて、そして辿り着く目的の場所。ピンポーン。ガチャッ。「どしたんや、財前君」「部長」驚く部長を無視して、俺はただ落ち着いて言った。「俺のデータのバックアップください」「ええけど、三日前のやで」この人は何故か俺のデータのバックアップを握っている。