終焉のワルツ

 かっこいいタイトルをつけたかっただけです。10年後注意。


 ぱちぱち。はくしゅかっさい。だいだんえん。しゅじんこうはこれからどんどんつよくなって、つよいつよいまひあのぼすになります。きっと。かならず。たぶん。

 「終わっちゃったね」
 「……始まりだっつーの」
 「あは、けっこー詩的じゃん」
 十年前に、終止符が打たれた、らしい。私がちょうど任務に就いていたとき、昂った衝動をさあこれからぶつけるぞ、と舌なめずりした瞬間に、心の底に氷をぶち当てられたようなやっすいやっすい感傷が急激に湧き上がった、あの奇妙な一瞬。あのとき、ちょうど十年前が終わったのだと、ベルがふてくされたように教えてくれた。

 「そっかー、じゃあもう私、ペーペーのベルには会えないんだ」
 「王子はいつでもプロフェッショナルだっつーの」
 十年前が終わったということは、もうあっち側からのコンタクトはとれない。逆もまた然りだ。まだまだ子供だったフランをからかって愛でることもできないし、中学生の真似事をして遊ぶこともできない。それは随分とさみしいことのように感じた。

 「じゃあ、私たちのこれからはどうなるんだろーね」
 「さーな。たぶん、これまでと変わらねーで、暗殺ばっかして生きるんじゃねーの」
 「刺激的な人生だなー」
 「でも、……どっかで、またはじめっからやり直しになるンだろーな」
 はじめから。なんだか今日は随分と哲学的だなァと思いながら、ベルの横顔をどこかぼおっとして見つめていた。難しいことは、よくわかんないから。

 「じゃあ、またボスとツナヨシが激闘を繰り広げちゃったりするんだ」
 「そー。お前も、あの路地裏からやり直し。俺らはしょせんアクセサリーなんだよ」
 十年前が終わって、もう二週間経った。ベルのいうように、どこかで終わりがあるんだったら、それはどうやって始まるのだろうか。終わりの始まり。うーん、頭が痛い。急じゃなかったらいいな。だって、お別れも約束もできなかったら、こんな自由すぎる男は、はじめっからやり直しなんてヤダって、どっか別のところに行っちゃうかもしれないし。

 十年前が終わったから、私たちも終わる。それって、なんだか理不尽。十年前のツナヨシは、たくさんのファミリーに囲まれて、今日も笑って過ごしているんだろう。それから、思い出をいっぱい積み重ねて十年経って、私たちみたいに世界から突き放されてしまうんだろう。まぎれもない、十年前の自分によって。それは、とてつもなく悲しい。

 「でも、終わんないかもしれないよ」
 「あ?」
 「綴ってくれる人がいる限り、物語って終わんないんだよ」
 「ンだよソレ。……しし、まあお前が楽観的なのは今に始まったことじゃねーしな」
 ベルが歯を見せて笑うのを、随分と久しぶりに見た気がする。
 ずっと、ずっと続けばいい。過去の私が、いつか悲しむことのないように。だって、私、もしも終わりが目の前に来たりなんかしたら、すごく泣いちゃうと思う。みっともなくベルに縋りついて、好きだなんて伝えちゃいそうだから。

 希望を持って、生きていきたい。私たちの戦いはまだまだこれからだ! なんてね。